嘘ガレ



花瓶選びをしておりますときに、一つ母が候補としてあげましたのが、エミール・ガレの作品のレプリカ。レプリカとはいえ、お店によってはまるでガレの作品であるかのように店頭に並べられておりまして、価格も数万円から数百万まで幅広く高価。どうやら、ガレ工房で作られてものを総称して「ガレの作品」としているらしいということがわかってまいりましたが、ガレ工房はフランスのはずなのにルーマニアで作られた品物も多く、謎がいっぱい。
ということで、たくさんのガレの作品を取り扱っている、あるデパートの特選品フロアで売り場の方に質問をしてみました。「こちらに並んでいるガレの作品ですが、これはガレ工房で作られたものなのでしょうか?」それに対する答えは、

「はい、そうです。よく皆さん、これは本物のガレの作品ですか?と訊かれるのですが、ガレ自身が制作をした作品というのはまずございませんで、ほぼ全てが彼の工房、ガレ工房で作られたものになります。ガレ工房には1期から4期までございまして、今はもうガレ工房というものは存在しておりません。ガレが存命だったのは第1期。その1期ですら工房には60人ほどの職人がいて、ある程度量産していたようです。
今、大量に出回っておりますのはガレ工房の作品ではなく、ほとんどがルーマニアなどのガラス工房で作られたもの。そういえば以前外国人の男性10名ほどと通訳の方がどどっと店内に入ってまいりまして、真剣な眼差しで作品に見入っておりました。通訳の方にお話を伺うと、ルーマニアでガレのレプリカを作っている工房の方達で、ガレ工房の作品を見にきたとおっしゃるのです。ですから、どうしてガレのサインまで入れてしまってレプリカばかり作っているのか。立派な技術を持っているのだから、その技術を生かしてオリジナルの作品を制作すればそれは美術工芸品として素晴らしいものができるのではないか、と申し上げましたら、自分達でもそう思っているのだが…(まあ色々と事情もあって)とのお答えでした。」

とのお話。なるほど。少し調べてみましたところ、ガレ工房で働いていた職人がルーマニアでガラス工房を始めたのが最初。現在ルーマニアには20以上のEmile Galleのレプリカを制作する工房があり、そのうち5つほどは政府推奨の工房となっているとか。ルーマニア政府公認の、まがい物工房、という事になりますでしょうか。
レプリカとはいえ、日本橋三越では10万円以上の価格で、そのほとんどが売約済み。とても人気があるようです。本当に、ガレのサインなど入れず、自信を持って自分の名前、工房の名前で売ることのできる、ガラス作品を制作できる日がくればいいですね。