キスをする場所



どこにキスをするかではなく、どこでキスをするかのお話。
昨夜、ミッドタウン内のスーパーで買い物をした後、檜町公園に向かって歩きはじめましたら、ゴミ箱が4つ並んだ真っ暗な階段の下に人影が。怖い。今はどこで突然刺されたりするかわかりませんし。どきどきしながら横を通り過ぎようとしますと、あ、どうやら二人の影のよう。なるほどキスをしていたのですか、それはそれは。それにいたしましてもお二人、ずいぶん長時間微動だにいたしません。まあキスをしながらわさわさ動いているのも不気味ですが、あまりに動きがないのもまた不思議なもの。不動のキス。まるでオブジェのようです。しかも、たくさんのごみ箱の前で。思わずここで始めてしまったので仕方ない、ということでしょうか。檜町公園には、いくらでももっと夜景が美しく、ロマンティックで薄暗いポイントがたくさんございますのになにゆえ。教えて差し上げたいわあ、などとお世話焼き婆さんのような事を考えながら、もうすぐ本当の世話焼きお祖母さんになる私は、お邪魔にならぬように足音を忍ばせつつ通り過ぎたのでした。