蔵座敷




食事は「蔵座敷」という、三十年ほど前まで実際に使われていたという蔵を改装した御食事処でいただきます。希望すれば個室の用意もあるそうですが、ほの暗く落ち着いた蔵の中でいただくお食事は風情があってよいもの。板長さんによる和食のコースの御品書きには、毎日女将が選んだ句と御題が添えられております。例えば八月十五日は「瓜・うり」、句は「瓜もらう太陽の熱さめざるを・山口誓子」。八月十六日は「秋」、「啼け歌え蝉よ信濃はすでに秋・三好達治」というように。
大ます薄造り、信州牛石焼、夕顔そぼろあん、等などの和食のコース料理ももちろんたいへん美味なのですが、なんと申しましてもお口が喜びましたのが「取り回し鉢いろいろ」。この「取り回し鉢」は料理長さんが作るのではなく、地元の方にお願いして作っていただいているという本物の「村のおかず」。あまりの美味しさに仲居さんに作り方を伺うと、親切に説明をして下さった上に丁寧に書かれたレシピまで。「でも同じように作りましても、作り手が違うと味が変わります。やはりどうしてもお婆ちゃんにはかなわない」のだそうです。



麻釜