3月30日(金)膵臓食Ⅲ どこでもいっしょ


  軟飯
  野菜椀
  白菜巻煮 ササミ
  コマツナ醤油和
  みかん缶
  ヨーグルト

朝、採血。数値が戻ってしまっていないかをチェック。この結果に問題がなければ、いよいよ明日退院です。
さて、この頃になりますと、もう点滴をしてない時間帯もあり、腕に針(チューブ)だけが残されているだけという状況のことも。で、トイレにまいりまして、ふと気付くと、(あ、点滴をしていないのに、点滴台を連れてきちゃった)。気付いた瞬間、他の患者さんがトイレに入ってまいりまして、慌てて点滴台を腕に引き寄せてみたり。点滴台だけ残すわけにもまいりませんで、個室に一緒に入り、用を済ませ、手を洗い、誰も見てなどいないのに、おどおどと周りの視線を気にしつつちょっと急ぎ足で病室へ。
今回の入院で12日間お世話になりましたのは、『消化器内科』。まさに入るべき病棟に入ることができたのですが、ずっと同室でしたFさんは、“脳梗塞”での緊急入院。本来は『神経内科』に入院するべきなのですが、ベッドに空きが出ず、ずっと『消化器内科』に。他の階に緊急入院していた『消化器内科』の患者が、ベッドが空くと移動してきたりということも。
このように、各科混合の入院患者の中で、まったく違った気配を漂わせておりましたのが、骨折など、『整形外科』の患者。内臓疾患系の患者というのは総じて皆顔色も悪く、歩き方もぺたぺたしておりまして、動きにも表情にもまったくもって覇気がありません。全体的に漂わせる気配がどんよりしております。それと比べますと、骨を折ってギプスをしている患者達は、痛々しい姿にも拘らず、活力に満ち溢れていているのです。歩き方、身のこなしが全く違います。夕方、談話コーナーで元気いっぱい携帯電話で話しこんでいるのはほとんどが骨折組。ソファーでぼわーっとしておりますのが内臓疾患組。廊下を点滴台を連れてそろそろと歩いておりまして、後ろからざっざっと、漲るパワーを振りまきながら近づき、追い越していく骨折組を、まるで他の星からやって来た生物を見るような目で見送ることしばしば。
血液検査の結果も問題なく、午後、I先生より待望の退院許可。母は、「食事が心配だから、もう少し入院させておいてもらえないかしら」などと申しておりましたが、入院待ちの患者がいっぱい、という病院。もう大丈夫となりましたら早いです。退院療養計画書、診療費請求領収書、次回の診察の予約表などが次々届けられ、「明日は朝食までしか出ませんからねー」。はいはい。検査も点滴もなくなり、一気にすることがなくなってしまい、シャワーで全身を洗いあげ、ベンジンで体中に残る粘着テープのぺたぺたを落とし、(これは少々失敗。ベンジンで肌が負け、現在脱皮中)、テレビ、読書。
同じ膵炎で入院中のおじ様方は、検査の結果が思わしくないらしく、お二人ともまだ退院は先のよう。先にも記しましたが、私は症状が出初めてから比較的早く病院にまいりまして、膵臓の専門医から的確な診断と治療を受けることができた。これはとても幸運なことでした。胃薬や痛み止めを飲んで自力で症状を抑えようとしたり、中にはお酒で痛みを紛らわそうとする人もいて、もうそうなると気を失うほどの痛みに救急車で運び込まれることがほとんどだとか。また急性膵炎というのは急激に症状が悪化する病気だそうで、軽症ならばまだ私が受けたような治療で済みますが、重症化した場合には即ICU(集中治療室)入り、数ヶ月に渡る入院、死亡率約3割、難病指定で医療費が無料になるというほどの怖い病気。
お腹が痛くなってくれてよかった、ちゃんと体が知らせてくれてよかった、と。


3月31日(土)退院




「すいさん」の朝食を終え、身支度開始。荷物をまとめ、12日ぶりにパジャマではなく服に着替え、髪を整え、化粧をし、母の到着を待ちます。仲良しになったFさんに挨拶をしにまいりますと、「えーーー!誰かと思ったわあ。判らなかった。うっわー、まるで別人ねー!」と。化粧をしている時と、していない時とでは、どうやら別人に見えるほど違うようです。ほほほ。入院中にお見舞いに来てくれた事務所のスタッフは、「いつもと変わらないじゃない」と言っておりましたが、あれは彼なりの優しさだったのか…。
10時過ぎに母が到着。会計を済ませ、ナースセンターにご挨拶をし、入院中ずっと左腕に巻かれておりましたバーコード付きのホワイトバンドを外してもらい、なんやかやでいっぱいになってしまった荷物を手に、タクシーに乗り込み、家へ。途中、タクシーの運転手さんに少しだけ回り道をお願いして、長い桜のトンネルの下を走って帰ることに。まさに満開。今年はもうお花見はできないかもしれないと半ば諦めておりましたが、間に合ってよかった。
おかげ様で、本当に多くの方々に助けられ、無事退院をすることができました。
まず、のん気な患者に的確な診断、処置をしてしてくださったI先生に。命を救っていただきました。夜通しの検査、点滴にも疲れた顔一つ見せず、いつでも笑顔で看護をしてくださった看護師さん達に。仕事のことは心配せずにゆっくり治すように言ってくました、社長や担当ピアニストに。すっかり迷惑をかけてしまいました、ごめんなさい。病室に綺麗なお花を届けてくださったピアニスト2のお母様に。メールや電話で支えてくれた友人知人に。日記にコメントをくださった皆様に。お見舞いにきてくれたスタッフ、婿、娘に。そして、誰よりも、何度も病院に足を運び、励まし、勇気付けてくれた母に、感謝を捧げます。ありがとう。とアカデミー賞の受賞スピーチのような挨拶になりましたところで、入院の記録を締め括らせていただきたいと思います。