車中の人は



「ご馳走様でした」とお店を出、「じゃ、千代田線で帰るから」と赤坂駅へ向かった社長とは反対方向に歩き始め、暫くいたしましたところで、突然少し前方に止まったタクシーの運転席の窓が開き、「お客様!お客様!」と運転手さんがこちらに向かって声を。ん?ときょろきょろしても辺りには私しかおりませんで。「お客様がお呼びですよね」と聞こえましたので、迎車のお客さんと間違えられたのかと思い、「え?私は呼んでいませんが」と答えますと、再度「お客様がお呼びです」と、今度は後部座席の窓がすーっと開くではありませんか。お客様が私を呼んでいる?いったい何処のどなたが、と窓から覗いた顔は…社長。「よろしければお送りしましょうか」とおっしゃいますので、「わはは、結構です、歩いてまいりますので」。笑顔の運転手さんに「宜しくお願いします」と声をかけ、手を振りお見送り。
これは遂にどこぞの富豪に見初められたか、とちょっぴりどきっとしてしまいましたよ。あ、富豪はタクシーには乗らないかもしれませんね。



ねむりひめ