5898本のパイプ



サントリーホール パイプオルガン レクチャーコンサートシリーズ2005「おしゃべりオルガン玉手箱 風琴ことはじめ」全3回の第一回目、「トッカータとフーガ」の謎、へ。前半は、オルガニストであり指揮者でもある鈴木雅明さんと、バッハ研究家の小林義武さんによるレクチャー。久々に、講義を受ける学生、の気分を味わってまいりました。(そういえばすっかり忘れておりましたが、大学の時にもパイプオルガンの講座を受講した事がございまして、実はあの頃からパイプオルガンに興味があったのだったわ、と思い出したり。)本日は、バッハの自筆譜を、透かし模様や、筆跡、音符の書き方などから、どの年代に作曲されたものなのかを判断する、その研究方法の解説や、あの有名な「トッカータとフーガニ短調BWV565」が、実はバッハの作ではないのではないか、という説がある、などなど興味深いお話を。
後半はオルガニスト長谷川美保さんの演奏で、フレスコバルディ、バッハ、ブクステフーデ、レーガー、そして長谷川さんご本人による即興、とトッカータ尽くし。

一部例外はあるものの、トッカータはオルガンの最も主要な(Principal)音色を用いて演奏されます。これらのパイプはオルガンの前面、聴衆に最も近い所やオルガン内部の中央に置かれていますから、大きく力強い音、輝かしい音色が響きわたり空間を満たすのです。華やかなトッカータを並べた今日のプログラムは、こってり味のディッシュが多いカロリーたっぷりのコースになりそうです。

と解説にも書かれておりました通り、サントリーホールのオルガンの響きのよさを満喫できるプログラムでした。特に、初めて聴いたレーガーの作品が素敵。割れんばかりの不協和音に包まれ、肌の表面がちりちりとするような感覚は、他の楽器では味わえないものかと。
そして、終演後のパイプオルガン見学会。こちらも素晴らしく楽しい経験でした。なかなか普段は近づくことのできないパイプオルガンを間近で見学。サントリーホールのパイプオルガンは4段手鍵盤、音色(ストップ数)は74種類、パイプの数は驚きの5898本。正面から見えているパイプはほんの一部、とのことで、裏に隠れているパイプを覗かせていただいたり、音量調節の方法や、コンピュータによる音色記憶装置のお話など、こちらも興味深いお話満載。目の前にあるパイプから音が出ると、もう空気の振動直に伝わってまいりまして。一番高い音は18000〜20000ヘルツ、一番低い音は16ヘルツ。16ヘルツの振動というのは、なんともおどろおどろしいものです。

あと2公演、プラス特別講座一回。楽しみです。そう、写真でもおわかりいただけますように、この時代のオルガンやチェンバロが、今のピアノと黒鍵、白鍵が逆になっていることが多いのですが、それは「奏でる女性の手が美しく見えるように」という配慮から、だとか。