葵上



一昨日、本当は以前お話をいたしました初文楽の予定でした。が、仕事と重なってしまった為断念。母にチケットを譲り、代わりに観に行ってもらったのですが母曰く、嗚咽をこらえるのが大変なぐらい感動した、との事。良かったです。

その代わり、という訳でもないのですが、知人からお声をかけていただき、昨日は能を観に行ってまいりました。

会場は慶應義塾日吉キャンパス来往舎アトリウム。来往舎という建物は一階から七階まで吹き抜けになっていて、アトリウムはガラス張りの美しい空間。キャンパスの銀杏並木を背景に、立派な能舞台が設えられておりました。

演目は「葵上」。以前にも観たことのある演目でしたし、いただいたパンフレットは、能についての簡単な説明から、あらすじ、ふりがな付きの詞章まで書かれておりまして、たいへん楽しませていただく事ができました。

怖かったですよ、六条の御息所の生霊。ちょっとした仕草にも恨みが込められていて、何度も背中がぞくぞくしてしまいました。般若の面を付けて激しく動いている時よりも、泥眼(?)という面を付けてゆったりと動いている時の方が、かえって怨念がひしひしと伝わってきて、恐ろしかったです。でも最後、静かに立ち去っていく姿には哀れも感じました。

生霊になるぐらい、誰かを強く愛してみたい、という気がしなくもないのですが、この六条の御息所の場合は、源氏への想いから、というよりもどちらかというと、葵上の家来に恥をかかされた事を逆恨みして、なのですよね。これはちょっといただけません。

そうそう、悪霊退散を命じられた横川の小聖が加持祈祷の中でくり返し、「曩莫三曼多縛日羅赦 (なまくさまんだばさらだ)」と唱えるのですが、思いついてしまった事がひとつ。

「なまくさまんだばサラダ」というのは如何でしょう。魔除けサラダ。なかなかのネーミングだと思うのですが。さて、レシピはどういたしましょうか。ドラキュラ除けならガーリックですが、悪霊が嫌う食べ物ってあるのでしょうか。