桟敷の外から



東京は夜の7時。どこからともなく聞こえてまいりますお囃子に、お祭はもう終わったのにこれは?と思いましたら、そういえば今日は、“第1回東京ミッドタウン狂言”の初日。その音が夜風に乗って届いたよう。今日の公演、確かチケットは完売だったような。どのような設えになっているのか興味もございましたので、夕涼みを兼ねて見に行ってみることに。
檜町公園の階段を上がり、お囃子の音のする方角に歩いてまいりますと、あら、あそこに見えるのは能舞台。きれいに舞台が見渡せるではありませんか。ロープが張ってありますので、遠目ではあるのですが、遮るものもなく、音もクリアに聞こえます。用意がいいことに、持参したオペラグラスを覗いたり、芝生にシートを敷いてじっくりと見物する人達の姿もちらほら。ちょっと屋外オペラの公演のよう。無料で見せていただいてしまうのは申し訳ないようですが、まあ公園から見えてしまうものは仕方がないということでお許しいただくことにして。いやあ、よきものを見せていただきました。本日の演目は、「三番三」(さんばそう)、「仁王」(におう)、「蝸牛」(かぎゅう)、の三つの狂言。明日の夜は、能囃子『雪月花』、狂言「二人大名」、そして能「葵上 古式」、とのこと。明日は残念ながら公演の仕事が入っておりまして行けないのですが、お近くでお好きな方は、双眼鏡持参で立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
以前関西の知人が、「東京というのは、お金がないと何も楽しむ事ができないところですね」、とおっしゃっていました。が、そうでもないようでしてよ。先週のお神楽といい、今週の能狂言といい、お金をかけずに楽しめることも探せば色々あるのです。何を楽しいと感じるか、にもよりますけどね。