親の情


「店が悪い!」 万引現場に“モンスターペアレント
「なぜ捕まえた」「通報されて子供がショックを受けている」。少年による万引が全国的に増加する中、子供の万引を通報された保護者が、逆に小売店に理不尽なクレームをつけるケースが相次いでいる。

という記事を読み、その話を母にしたところ、「わかる気がするわ、親の気持ちとしてはそうよね」、「えーっ!それじゃあ、お母さんモンスターペアレントじゃない」、「だって、もうその子の一生はたった一度の過ちで台無しになってしまうじゃないの。もしもK(孫)がそうなったらどうする?」、「やっぱり、悪いことしたら罰せられるべきじゃない」、「それはそうだけど、一度めは赦してあげるべきだと思うわ。今回だけは見逃します。でも次にしたら警察にも学校にも連絡しますよ、って」。母の性格を考えますと、もしも店主だとしましたらきっとそういたしますでしょう。私だったら…。
そして実家からの帰りの地下鉄で、近松門左衛門の『冥途の飛脚』を読んでおりましたら、馴染みの遊女梅川を身請するために預かった大金を流用してしまい、梅川と共に逃亡中の忠兵衛を案ずる実の親、孫右衛門の言葉を読み驚いてしまいました。

「…世の譬(たと)へにいふとほり、盗みする子は憎からで、縄かくる人が恨めしいとはこのことよ…」

思わず電車の中で目頭を押さえそうになる、近松門左衛門の物語の運びの巧みさ、孫右衛門の親心。実際にあった事件を元に、この人形浄瑠璃の演目が書かれたのは1711年のこと。すでにその時代に、「世の譬へにいふとほり/世の諺に言うとおり」とは。子を想う親心というのは、変わらぬものなのだわと。
まあ、学校やお店に理不尽なクレームをつけるモンスターペアレントの行動は論外ではありますが。