父、疑惑の電話



その日、母はすでに仕事に出かけ、実家には父と二人だけ。寝室の父が、「もしもし」と、携帯から誰かに電話をしているよう。珍しいですこと。
思わず聞き耳を立てますと、「あー、Y(苗字)ですけど」、暫しの沈黙の後、「ああ、運転免許証、あったから。うん、ふふふ、うん、うん、じゃ」、と。
えーーー、怪しい、いったい誰に電話をしたのでしょう。しかも、運転免許証って身分証明が必要ってこと?もしや悪い女に騙されて…これは大変。すぐに母の携帯に、「…という電話をどこかにしていたわよ。何だかわからないけど、気をつけたほうがいんじゃない?」、とメール。
そして夜になり、会社から戻った母から電話。「メール見たわよ。お父さんと二人で大笑いよ」、と。あの疑惑の電話は、母にかけたものだったのだそうです。朝、出がけに運転免許証がない、と父が探していたそうで、見つかったので弟の会社に電話。最初に出たのが別の社員だったので、まず苗字で名乗り、電話口に出た母に免許証が出てきたことを報告したのだとか。なーんだ。
このところ、もうすっかり呆け呆けの父なのでちょっと心配しましたが、「emimiも何を言ってるんだか」と大笑いをしていたそうです。ま、何事もなくて、よかったよかった。