乃木神社『管絃祭』


仕事を終えまして、早歩きで乃木神社へ。一度観てみたいと思っておりました、『管絃祭』。
管絃祭の観賞は“参拝”、管絃祭で演奏をすることは“奉納”、になるのですね。午後六時より、まず、修祓、宮司一拝、献餞、祝詞奏上、玉串拝礼、と祭典が行われまして、その後演奏開始。今宵の演目は、

■第一部 催馬楽・管絃 (さいばら・かんげん)
双調音取 (そうぢょうのねとり)
催馬楽:安名尊 (あなとう)
管絃: 陵王 (りょうおう)
■第二部 舞楽(ぶがく)
右方 林歌 (りんが)
左方:散手(さんじゅ)

よろしゅうございますね。今日の東京はまた暑くて、蚊がおりますのか焚かれた蚊取り線香の煙にむせそうになりましたり、都心ですので時折上空を通過するヘリコプターの音が煩かったりいたしますものの、秋の虫の音や、木々のざわめきの中での典雅なひと時。
天皇の御遊/ぎょゆう(宮中で催された管や絃の遊)等に演奏されていた演目とのことで、三管/さんかん(鳳笙/ほうしょう、篳篥/ひちりき、龍笛/りゅうてき)、三鼓/さんこ(鞨鼓/かっこ、太鼓/たいこ、鉦鼓/しょうこ)、両絃/りょうげん(琵琶/びわ、箏/そう)が奏でる、まさに雅な調。音頭より少しずつ遅れて助管が順番に同じ旋律を吹く、という「退吹/おめりぶき」など、まるで斬新な現代音楽を聴いているかのよう。蝋燭の灯りが揺らめく中、拝殿に映える色鮮やかな装束に身を包んだ舞人の姿は、時に典雅、時に勇壮。
興味深かったのが、中途退場をする外国人の多さ。私がおりました席の近くの欧米人、中国人は、一人を除いて全員途中で席を立ってしまいまして。幽玄。風雅。あの趣を味わいを愛でるのは、日本人以外にはなかなか難しいことなのかもしれない、と。
そういえば、屋外での催しということもあり、祭典の途中で、前の席のスーツ姿の男性の背中に大きなカメムシが付いてしまいまして。叩いて差し上げようかとも思ったのですが、なにせカメムシですので刺激をすれば臭いますし、神社の拝殿で殺生はやはりまずいであろうと。教えて差し上げようかとも思ったのですが、静まり返った状況の中、「あの、背中にカメムシが…」、とはなかなか声をかけ辛く。肩の端まで歩いてまいりましたカメムシ、飛び去るかに見えたのですが、今度は隣の男性の背中に飛び移りぺったり。しばらくTシャツの背中を歩き回ったのち、ああっ、ついに首筋に!というところで、ちょうど全員、席を立っての二拝二拍手一拝となり、そこでカメムシは遠くへ飛び去りまして、ほっと。
さてさて、ずいぶん先の話になりますが、来年の管絃祭は10月14日(火)の予定とのこと。ご興味がおありでしたら是非一度。