スカイプ・レッスン



担当ピアニストは現在ミラノ。今回は10月まで帰国しない予定です。日本にたくさんのピアノの生徒がいるのですが、その間はまったくレッスンをすることができません。中には受験を控えた生徒も。2ヶ月近くレッスンがないというのは、深刻な状況です。
私が言うのもなんなのですが、担当ピアニストは教えるのが素晴らしく上手。私の知りうる限りのピアノ教師の中でもその力は群を抜いております。普段、レッスンに立ち会うことはあまりないのですが、公開レッスンなどを見ておりましても、みるみる生徒達の演奏、音楽がよくなるのです。普通とはちょっと違う、とても変わったレッスンなのですよ。「その音が間違っているわよ、ここが変よ」というあたりまえの教え方ではありません。うまく弾けない、その根本に何があるのかを見極めて、体の使い方など、「ここをこうすればいいのよ」という具体的な解決策を示します。例えば、曲の一部分だけを延々と弾かせることも。でも、そこが理解できれば、曲全体だけではなく、その生徒の演奏そのものがよくなる。なんと申しましょうか、例えば、木を育てるのに、伸びた葉や枯れた葉を切って取り除いて整えるだけではなく、根を解し、根詰まりを直し、根の傷んだ部分に手をいれる、そういった印象のレッスン。
ということで、生徒や父兄、先生方から絶大な人気を誇るピアニストなのですが、日本にいない間はどうすることもできません、でした、これまでは。それを何とかしようと、ピアニスト本人が思いつきましたのが、インターネットを使ったskypeによるレッスン。
ということで、お試しレッスンをしてみているのですが、これが意外ときちんとレッスンとして成り立つのですよ。まず私がピアニスト宅へ出向き、パソコンのセッティングをし、生徒を迎えます。生徒は、カメラ位置やヘッドホン、音量などを調整。パソコンにはやはりミラノのピアニストがヘッドフォンをして鍵盤に向かっている姿が。で、レッスン開始。生徒がピアノを弾きながら、時々パソコンの画面に向かって、「はい、はいわかりました」、などと話しかけている。見ていると、なんですか笑ってしまうような、不思議な光景。レッスンを終えた生徒に感想を聞くと、皆口を揃えて、「わかりやすかった。ちゃんとレッスンになっている。みてもらえて良かった。またお願いします!」、と。へえぇ、なのですが、これは手ごたえあり。ミラノと東京間でピアノのレッスンが成り立つ。いやはや、技術の進歩のお陰様様です。