ツィエ



東京文化会館でお仕事。事務所の公演は小ホールだったのですが、大ホールはボローニャ歌劇場、ヴェルディの歌劇『イル・トロヴァトーレ』。主役はロベルト・アラーニャダニエラ・デッシーという、なんとも贅沢なキャスティング。地階の楽屋は小ホールも大ホールも共用ですので、所用で下りましたところ、なんとそこはイタリア。規模の大きな公演ですのでスタッフの数も多いのでしょう。まさに老若男女、ベビーカーに乗った赤ちゃんから、おばあ様まで、聞こえてまいりますのはイタリア語ばかり。
帰りのエレベーターには「アーアーアー」とよき声で発声練習をしておりました男性がちょうど乗り込んでまいりまして、私よりも先に降りる時ににっこりと微笑まれ、軽く会釈をしつつ小声で「…ツィエ」。おお、「グラッツィエ」とはっきりおっしゃらずに、「ツィエ」なんですのね。きゃあ、なんだかとっても本場風。
以前に、ドイツでも、「グーテンターク」とは言わずに「ンターク」と言うと通っぽく聞こえる、というお話を伺ったことがございまして、もしもドイツを訪れる機会がございましたらぜひ使ってみたいものだわ、と思っておりましたが、イタリアを訪れましたら「…ツィエ」ですね。
ただ、日本語の場合ですと「こんにちは」を「ちわ」といたしますと相手にたいへん失礼になってしまいますよね。「ツィエ」、「ンターク」。本当は、彼の国々でもお行儀の悪いことなのだったり、しないのでしょうか。