スペイン語



スペイン人も出演する公演でのことです。会社の他のスタッフは全員、別の公演の準備に出てしまい、その時楽屋事務室に詰めておりましたのは私だけ。スペインの方達が事務所の前を通っても会釈をしたり微笑んだり、手を振ったりしてごまかしていたのですが、遂に恐れていた事態が。一人のスペイン人が事務室に入ってきて話しかけてきたのです。最初の一言。「…エスパニョー…」と聞こえましたので、これは「スペイン語は話せますか?」と訊ねてきたに違いない、と「いいえ」と英語で答えると、やはり「では、英語は話せますか?」と。なので「少しだけ」と答えますとなかなかややこしいことをおっしゃいまして「今日これから私の妻が来るのだが、チケットを用意してもらえないか?4時に楽屋に来る予定になっているのだが、受付で渡してくれるか?それとも君が私に渡してくれるか?」と。「今、チケットが手元にないので後ほど、私が直接お渡ししましょう」となんとか伝えると、彼は満足げ。

ここで、その日の朝、娘に「こんにちは」ぐらい言えるようにしたいからちょっとネットで調べて、と頼み検索してもらった「ブエナス・タルデス」という挨拶について訊ねると彼はちょっと困ったような顔をして「それは、午後しか使わない挨拶だ」と。(この時は午前中でしたので。)普段の軽い挨拶は「オラ!」でいいのだそうです。日本では一部のご職業の方々がお上手そうなご挨拶ですね。「おらぁっ!」。巻き舌は使わない「ら」のようでしたが。

午後4時。お約束通り楽屋を訊ねてまいりました奥様は、なんと日本人。もしやこの男性日本語もお出来になるのでは?と思いましたら案の定、にっこり微笑んで「どうもありがとう」と日本語で。えぇぇ、人が悪いですよぉ。