SVIATOSLAV RICHTER



スビャトスラフ・リヒテル。一人だけ好きなピアニストを選びなさいといわれたら、私はリヒテルを選びます。初めて泣かされたピアニスト。高校の時でしたか、大学に入ってからでしたか、ちょっと思い出せないのですが、上野文化会館の二階席で聴いたベートーヴェンソナタ。涙が零れて、自分で驚いしまったのを覚えております。それまでコンサートで泣いたことなどありませんでしたし、ましてやベートーヴェンソナタで涙が溢れるとは思ってもおりませんでしたので。

先生方のおっしゃる「音楽」というものが今ひとつ掴めなかった時期。「ああ、まさに理想、目指すべきはここなのね」と耳で、身体で、心で、理解した瞬間でした。