夜の銀座



この帯は母が銀座の呉服屋さんで求めたものを、譲り受けたものです。


先日銀座の裏通りを歩いておりますと、一角がたいへん華やいでおりました。開店祝いのお花が30ほども飾られていたでしょうか。どうやらクラブの開店のよう。今、銀座では新しいクラブやバーの開店はほとんどないのだそうですね。これだけ立派なお花がたくさん並ぶのは久しぶりの事だとか。

着物姿やドレス姿の女性達がお客様にご挨拶をする為にお店の前に立たれていらっしゃいましたが、本当にお綺麗。素人さんっぽいホステスさんが増えたと聞いておりましたが、やはり銀座は銀座。まだまだ女性の私でも驚いて見とれてしまうほど美しい方達をたくさんお見かけしました。


大学生のある時期、父の友人のおじ様に銀座や新橋のバーやクラブに飲みに連れて行っていただいておりました。

「ママ、今日の着物も素敵だね。似合っているよ」「あらぁ、嬉しい。ありがとうございます。今日のは安物なのよ。お恥ずかしいわぁ、うふふ」などという会話を聞き、ママに奨められたカンパリソーダを緊張しつついただきながらも、大人の世界を覗かせていただいているようでとても楽しかったのを覚えております。

ある時、父が以前お付き合いをしていたという女性がママのお店に連れていっていただいたんです。私をじっと見つめて、少し目を潤ませながら「むかーしのお話よ」と微笑んだその人は、どこか面差しが母に似ておりました。

おしゃべり娘であった私は、帰宅してから母にその事を話してしまい、母がそのおじ様に抗議をし、それから楽しい銀座飲み歩きには連れて行っていただけなくなってしまいました。今思えば、心遣いの足りない娘でした。

今はとっても口の堅い大人になりました。また銀座に飲みに連れていって下さらないでしょうか。ね、おじ様。