言ってみたいのに



もうずいぶん前の事になるのですが、同窓会に出席いたしました折、たまたま隣の席に座られた知的で上品な先輩がご挨拶の中で「今はもう只以下の人でございます」という言葉を使われたんです。

なんて謙虚で素敵な言葉かしら、いつか私も使わせていただきましょう、と密かに心の中にメモをいたしました。が、それ以来忘れ得ぬ言葉でありながら、どうもこの先私が使う機会はないのではないか、と最近思うようになりました。

と申しますのもこの言葉、何かお仕事で実績があるとか、世の注目を浴びるような事があった方が使ってこその言葉なんですよね。ずっと只の人、最初から只以下の人であった場合には使えない言葉なんです。

という事で、言ってみたいのに言えない言葉。
「今はもう只以下の人でございます」