絵付け体験



サントリー美術館『鍋島』展のエデュケーション・プログラム、「お皿に絵を描く」に参加してまいりました。
いつもの通り、初心者にとってはなかなかに難しいことを当たり前のようにさせてしまうこのプログラム。今回も、まず鍋島についての簡単な解説の後、白い紙と鉛筆を持って美術館内を見て歩き、各自デザインを決めて戻り、はい、では描いてみましょう。頑張るしかありません。
直系13センチほどのお皿ですので、あまり細かい文様は技術面も時間的にも無理。ぜひ吉祥文様の桃を描いてみたいと思っておりましたので、桃が流水を流れる絵柄に。どんぶらこー、どんぶらこー、と大きな桃が三つ流れてきました、というデザインにいたしました。
絵付け“体験”ですので、使用いたしましたのはフランス、ペベオ社のポーセレンという絵の具とマーカー。家庭用オーブンで焼き上げることのできる便利な絵の具です。
やや深さのあるお皿でしたので、思いのほか描くのは難しく、また時間も限られておりますのでもう必死。鍋島らしさを気持ちだけでも演出するために裏にもどうしても絵を描きたかったので、最後はもういら草を編み続けるエリサのように誰とも話もせずにひたすら筆を運び、ギリギリで描き上げましたのがご覧のお皿。

桃の実のぼかしは考えて私はティッシュを使い薄めた絵の具で入れましたが、実際の鍋島は点描とのこと。徳川将軍家への献上品ゆえ採算度外視、気が遠くなるような手間ひまをかけて完璧に仕上げたという鍋島は、芸術性が高く、現在まで残っている数が極めて少ないこともありたいへん高価で、1つ数億円という値のつくものも多いとか。
もう1つ、何故桃が吉祥文様とされるのかを調べてみましたところ、不老不死を望んだ漢の武帝に、西王母という仙女が三千年の寿命を延ばす桃の実を与えたという物語や、六朝時代の詩人、陶淵明の『桃花源記』に、「川上から桃の花が流れてきたのを見て上流へ辿ってみると、桃の花が咲く不老長寿で豊かな隠れ里があった」という桃源郷の物語、など中国の伝説からきているのだそうです。
焼き上げたお皿を孫一に見せましたところ、「うん、いい感じ。写真に撮っておいたら?」、と。嬉しいことを言ってくれるじゃありませんか。