機を見るに敏



先日の『不平の合唱団』の公演前、雨の中でのパフォーマンスに備えて各自が透明のビニール傘を用意することになりました。ちょうど私の家にも、娘の家にも一本も透明ビニール傘がなく、練習の帰りに買って帰ることに。
六本木の交差点の近くに一軒、イラン人と思しき外国人が店長さんの100円ショップがありますのでそのお店を訪れましたところ、傘は数種類あるのですが透明のものが見当たりません。店長さんに、「透明のビニール傘はありますか?」、と訊ねると、じっと俯き考え込んでいるので日本語が通じていないのかと、「Do you have an… umbrella?…transparent…」などと説明し続けておりますと、「はい、ありますよ。今裏にあるから持ってきますので、ちょっと待っていてください。200円ですけどいいですか?」と突然流暢な日本語で返答。えー、何故200円?と思いましたが、翌日までにどうしても必要でしたので、「はい、いいですよ。あってよかったです」、と消費税を含め210円で買い求めてまいりました。
凄いわあ。機を見るに敏な男とは、彼のようなことを言うのでしょう、たかが100円の儲けでオーバーではありますが。どうしても必要と見るや、倍の値段で売りつける。見事です。
さてこの傘。透明傘ではありますが、持ち手が黒、止めるベルトも黒で、その黒いベルトには白抜きでUMBRELLA UMBRELLA UMBRELLAとプリントされておりまして、自らが傘であることを主張しておりますちょっと珍しい傘。少々恥ずかしい傘ではあったのですが思わぬところでこの自己主張に助けられました。それは、100名のメンバーの透明傘をまとめて預ける、という状況がございまして、予想できたことではあるのですが引き取る時に皆さん、どれが自分の傘だかわからなくなってしまいました。が、UMBRELLAと書かれております傘は100本のうちたった一本。皆さんが「えー、これかなー」と迷っている中、自信を持って自分の傘を回収することができたのです。商売上手な店長さん、変った透明傘を扱ってくださっていてありがとう。
※画像はミッドタウンのスターライトガーデン。