所作



大学を卒業するかどうかという頃のこと、比較的大きなカルチャーセンターでピアノを教えていた時期がありました。
生徒は小さな子供から、高校生、近くの市役所にお勤めのおじ様方まで。確か週に1、2回、午後3時ぐらいから8時過ぎまで、だったでしょうか。1人30分のレッスンがびっちり入っているわけではなく、自由時間は好きに過ごしていいことになっておりまして、自分のレッスン時間にあてたりもしておりましたが、ある時思いつきまして、この空き時間を利用し、他のお教室の生徒になってしまうことに。
多くの講座の中から選びましたのが、茶道(裏千家)と、華道(池坊)。カルチャーセンターの館長さんが、今考えましたらたいへん甘い方で、逆にその時間にはなるべく生徒さんを入れないようにしてくださったり、との配慮もあり、結婚が決まり、この教室をやめるまでの1年半ほど、お茶とお花のお稽古を続けることができたのでした。
短い期間ではあったのですが、この時に学んだこと、というのが今も日々生かされているのです。例えば食器洗い。お茶碗などを洗う時には、濡れた茶巾で茶碗を拭く所作が。スプーンなどのカトラリー類を洗う時には、ふくさで茶杓を拭く所作が。どちらも無駄のない美しい動き。大切なものを見る時には、うっかり手が滑っても大丈夫なように、低い位置で扱う。また、花を生けたり物を飾る時には、「それぞれの花には一番美しく見える角度というものが必ずある」、という教え活かす、などなど…。
娘などは、お茶もお花も嗜まないうちに結婚してしまったのですが、子育てが一段落いたしましたら、順番は逆になりますが、是非こういったお稽古事などを始めたらいいのではないかと思っております。