車載車



鳥の囀りで目覚め、朝風呂。ゆったりと朝食をとり、チェックアウト。
まず仙石原から大涌谷へ向かい、玉子茶屋で「一個食べると7年、二個食べると14年寿命が延びる」という『黒タマゴ』を買い求めることに。実は、前回母が箱根を旅した折に、「お土産は何がいい?」と訊かれた娘が大涌谷の『黒タマゴ』を頼んだのですが、母が買ってきてくれましたのは、『黒ちゃん玉子』。名前は似ておりますがぜんぜん違う品を買い求めてしまった母が、「今回こそは『黒タマゴ』を買って帰ってあげたい」、と。
道に覆いかぶさるような新緑がうっとりとするほど美しい山道を上り、大涌谷へ。駐車場に車をとめ、箱根の山々を従えた雄大な富士山、有毒ガスの硫化水素が噴出している噴煙地、を眺めつつ、徒歩で玉子茶屋へ。たまにお土産としていただく『黒タマゴ』も美味しいものですが、この玉子茶屋の前で、湯煙に包まれながら、持てないほどの茹でたて熱々を頬張る『黒玉子』がやはり最高。お土産用に数袋買い求め、また徒歩でてくてく駐車場へ。
山を下り、強羅を抜けて箱根湯元でお土産を買い求めることに。古いジャガーということもあってか、エンジンブレーキはほとんど効きませんし、普通のブレーキも強く底まで踏みしめないと止まらないほど甘い効き。ちょっと危険よね、と思いつつも、前回の箱根旅行も問題なく走ってくれたしまあ大丈夫でしょう、と急な山坂道を下り、登山鉄道の踏み切り待ちをしておりました時に、母が「これは何?」と。これは…白煙ですね。え、この車から?いやーん、どうしましょう。まずはどこかに止めなくては。咄嗟に母が「その横の空き地に突っ込んじゃいなさい、早く!」と。ちょうど横にございました広い空き地に車を停め、エンジンを切り、車外に出てみますと焦げ臭い臭いと、前輪の左右からほわーっと白煙が。ボンネットの横からも出ているように見えます。母が「ボンネットを開けて。映画だと、こういう時はそうしてるじゃない」、と。でもどうやってボンネットを開けるのかもわかりませんし、へんなところを触って火傷をしたりしても困りますし。
まずは弟の携帯に電話をするも「ただ今電話に出ることができません」。仕方ありません。すでに白煙はおさまっておりましたが、「JAFを呼んでしまいましょう」、と電話連絡。現在地と状況を伝えると、40分ほどで来てくれるとのこと。弟からも電話が入り、報告。
落ち着かないものの、持っていっておりました本を読みつつ待っておりますと予定通り、ちょうど40分ほどで一台の車載車が到着。JAFのおじ様です、ありがたや。まずざっとタイヤ周りをチェック。「ブレーキかと思ったけど、そんなひどい状態じゃないね。これなら1時間ほどしっかり冷やして、気をつけて走れば大丈夫かもしれないけど、保障はできない。下まで下ろしてあげて、そこから自力で走って帰るという手もあるけど、もしかしたらエンジンという可能性もあるし。」とのこと。ボンネットも開けてチェックしてくれたのですが、「ジャガーはわからないね。この辺の整備工場に持ち込んでも、ベンツぐらいならなんとかしても、ジャガーは無理だと思うよ。」と。「プロとして、この場合どうするのが一番いいと思いますか?」と訊ねますと、「平塚にジャガー湘南の工場がある。ジャガー湘南の社長は古いジャガーが大好きだから、たくさん扱っている。その整備工場に持ち込んで見てもらうのが一番いいんじゃないか。このまま自力で山を下って、途中でもう一回ブレーキから煙が出たら多分もうスコーンといってしまって、箱根は退避帯も無いし、ガードレールにでも突っ込んで止まるしかないだろうね。」とのこと。「では、平塚まで載せていっていただけますか?」と訊くと「いいよ」、とあっという間にジャガーを母と私を積み込み出発。平塚へ。
途中、今までにJAFのおじ様が経験した様々な事故の話を聞きながら、無事、平塚の工場へ到着。車を降ろし、工場へ入れてもらい、早速整備士さん達がチェック。30分ほどかけて点検をした結果は、「ブレーキは大丈夫です。おそらく、坂道でブレーキを踏みすぎて煙が出たのでしょうが、問題ありません。ブレーキパッドが1、2ミリしかありませんので、戻ったらすぐに交換してください。それと、腐食によってマフラーが真っ二つに折れています。凄い音ですよね。他はオイルも水位もエンジンも全てチェックしましたが問題ありません。」とのこと。「ブレーキパッドの在庫はないし、マフラーの応急処置もできないが、千葉まで帰るのにはまったく問題ない」、とのお墨付きをもらい、とりあえず安心をして平塚を後に。「なるべくブレーキを踏まないようにしなさいね」、と無理な注文をする母に、「それはなかなかに難しいわ」と答えつつ、厚木から東名に乗り、首都高を抜けて無事実家の車庫へ。うわーい、良かった。
弟に、(もう流石に買い換えるのでは?、と淡い期待を抱きつつ)整備士さんの言葉を伝えたのですが、「わかった。来週、工場に入れて修理するから」、と。お気に入りのジャガーを手放す気はまったくないようです。さて、修理を終えましてもきっとそのまま夏のヴァカンスに突入。次にドライブができるのは、秋、でしょうか。