古布



ちりめん細工用にと、母が奈良から取寄せました古布の中の一枚。旧家の子女のお召し物だったものしょうか、柔らかい手触りの、なんとも艶やかな柄行の縮緬です。“宿題”ではなくなったとたん、仕事から戻ると、ちくちくとお針仕事がしたくて。この美しい布と、私の道行を仕立てた時の残りのはぎれとで、先だって教室で教えていただきました椿袋を、もう1つ作ってみようと思っております。
そういえば、今、京都にもたくさんのちりめん細工のお店があり、なかなか繁盛しているのだそうですが、そういったお店で扱っている商品のほとんどは、正絹ではなくレーヨンの縮緬で作られた安価な中国製なのだとか。どうしても風合いに欠け、縫製も雑とのこと。それでも外国からの観光客のお土産としてもよく売れているのだそうで、それらを伝統的な日本の縮緬細工だと思われてしまっては悲しい、と先生は嘆いていらっしゃいました。一昨年訪れたドイツの玩具の村ザイフェンでも、中国製の安価な木製玩具が、やはり価格が安いので観光客にはとても人気だという話を伺いました。世界中のあちこちで、きっと同じようなことが起きてしまっているのでしょう。