チェコへの扉



昨日は上野の国立国会図書館国際子ども図書館へ。『チェコへの扉ー子どもの本の世界』関連講演会を聞き、展示を見てまいりました。
まず、講演会前のチェコ音楽演奏会。楽しみにしておりましたが、登場いたしましたのは、意表をつくサックス・カルテット。ドヴォルザークのスラブ舞曲から1曲と、ユーモレスク、そしてチェコ民謡の“おお牧場はみどり”を演奏。なんでも、1961年4月に放送を開始した、NHKみんなのうた』の第一回の放送は“おお牧場は緑”だったとか。
講演会の内容は、チェコの絵本の歴史と主だった作家、作品の紹介。今回の展示は、チェコ語、スラブ語を専門とされていた言語学者千野栄一さんがそのコレクションを国際子ども図書館に寄贈し、実現したものとのこと。千野さんは、絵本を蒐集するにあたり、「本は必ず3冊集めることにしている。一冊は自分用、一冊は貸出し用、一冊は保存用」、とおっしゃっていたとのこと。なるほど。私の場合、入手が難しい本であることと、なによりも資金と保存場所が限られておりますため、同じ本を数冊ずつ揃えることはなかなか難しいのですが、本当はそうあるべきなのかもしれません。
興味深いと思いましたのが、チェコ人の、外国人からの評価に対する反応。「チェコのこの作品は本当に素晴らしいですね」、と話しかけると10人が10人、「そう、確かにいい作品だ。だが、君達にはわかりにくいだろう?」と答えるのだそうです。独自の高い水準の文化に対する誇りと、言語の特殊性もあり、本当の良さは外国人には理解されないという劣等感とが入り混じり、まるで出し惜しみをしているかのような反応を示すことが多いとのこと。
それと、もう一つ面白いと思いましたのが、図録に書かれていた、チェコの作家カレル・チャペックのエッセイを千野栄一さんが訳した『趣味』についての話。「人類一般について話しているが、どちらかといえばただ男についてのみ話すべきであろう。女ははるかに少なく、それどころかごく稀にしかコレクション、飼育、それにアマチュアの趣味というようなものに落ち入ることはない」、つまりコレクションは男性にしかできない趣味であるとチャペックさんはお考えであったようです。チャペックさんの説からまいりますと、私はもしや男っぽいのやも。
展示されております絵本は約260冊ほど。チャペック、トゥルンカ、パレチェク、ラダなど多くの美しい絵本の紹介のほか、クバシュタやパツォウスカーのしかけ絵本の紹介も。会期は9月7日まで。チェコや絵本に興味がおありの方は、ぜひ。