『旅するウミガメ』



ミッドタウンで、環境省・d-labo/スルガ銀行 共催セミナー『旅するウミガメ』に参加。お話をしてくださったのは、日本ウミガメ協議会代表、国際ウミガメ学会理事の亀崎直樹さん。いやあ、楽しいひと時でした。
愛らしい大きな丸い目を潤ませながら砂浜で産卵をする姿が、世の母親達の共感を呼ぶウミガメ。テレビで見ますと、夜、ひっそりと砂浜に上がってきて、苦しみながらも静かに産卵をする、というイメージがございますが実際はまったく違うのだそうです。まず水面から頭を出して海岸の安全を確認。砂浜に上がってきたカメは、ザッザッと砂をかき、ぶはっ、ぶはっと激しい息をし、まるで「私はここよん」とアピールをするかのように騒がしいものなのだとか。産卵時の涙も、余分な塩分を排出しているのであって、苦しみに耐えて流しているわけではないのだそうです。
他にも、例えば、自然保護教育の一環などとして開催され、ニュースでも度々取り上げられる“子ガメの放流会”。これは、必ずしもウミガメにとっていいことではないとのこと。本来、子ガメというのは卵から孵化すると光の方へ進む習性があり、砂浜よりも光って見える海に向かって進みます。この時に体の中の磁石がセットされると考えられているとのこと。そして孵化は通常夜。これは近海の魚達が眠っていて襲われる危険が少ないから。それを、人間が砂浜から掘り出し、別の場所で孵化させ、再び砂浜に運び、子供達の手によって直接海に放されてしまう、しかも日中。人の手によって子ガメを放流するのは、ウミガメにとって迷惑なのではないか、というお話。
日本で生まれた子ガメはどこで育つのか?日本近海で、中学生ぐらいの年頃のカメを見かけることはありません。ではどこで?世界各地で見つかったその年頃のカメのDNAを調べたところ、どうやら日本で産まれたカメは、海を渡り、中米の豊かな海で育つらしいということがわかったとのこと。アメリカ西海岸、サンディエゴの水族館で飼われていた日本産まれのカメ3匹が、大きく育ちすぎたので海に戻そうという話になった時に、発信機を取り付けて放したのだそうです。すると、まるで伝書鳩。一直線に日本に向けて帰ってきた、というお話。
少人数で全国のカメの産卵状況を調べるのには限界があるため、個人のボランティア、サーファー、漁師さんの協力を得て、現在日本では世界に誇れるデータが集められている、というお話。人間は猿と交わったりはしないが、カメはカメと見れば、ぜんぜん違う種類のカメとでも交配してしまう、というお話。ウミガメよりも更に深刻な絶滅の危機に瀕しているのは、ウミヘビ。ウミヘビにも愛を、というお話などなど。
亀崎さん、たいへんお話上手で、2時間があっという間。d-laboのセミナーに参加したのはこれが初めてでしたが、今回は会場にサントリーのウィスキー響17年も用意され、(飲みたい人は)飲みながら聞くことができるという驚きのセミナー。また興味のあるテーマのセミナーには、是非参加してみることにいたしましょう。
d-laboを訪れましたのも今日が初めて。スルガ銀行の一角になるのですが、読んでみたい本ぎっしり1500冊のライブラリーコーナーや、引き出し式のギャラリーなど、たいへんユニークな空間。静かに本を読みに、また訪れてみたいです。