六種の薫物


鳩居堂、『六種の薫物(むくさのたきもの)』。
添えられましたしおりによりますと、

唐僧鑑真の入来により、日本に伝えられたとされる合わせ香=薫物(たきもの)は、平安時代の雅やかな王朝文化を舞台に人々を優美な世界へといざなってゆきます。
この時代より今に伝わる薫物の代表的な香りが『六種の薫物』。黒方、梅花、荷葉、菊花、侍従、落葉です。王朝人はこの六つの香りにより、日本の美意識・季節感をあらわしました。

明治十年、『六種の薫物』をはじめ、宮中伝来の数々の秘方が鳩居堂に伝授された、とのことですが、同じ名の薫物でも香木の粉の調合は人それぞれであったようです。これらの香は源氏物語の中にも登場するのですが例えば、『黒方』は斎院がお合わせになったものが奥ゆかしい、花散里の『荷葉』は哀れ深く心優しい味わいがある、『侍従』は源氏の君がお作りになったのが一番なまめかしい、などというように。
また、これらの香には焚くべき季節もあり、「黒方(くろぼう)」は四季を通じ及び祝い事、「梅花(ばいか)」は春、「荷葉(かよう)」は夏、「菊花(きっか)」は秋、「侍従(じじゅう)」、「落葉(おちば)」は冬、と。
まずは、『菊花』を部屋に焚きしめてみることに。