渋谷フランセ



子供の頃。祖母の家に遊びに行った時の楽しみの一つ。それは、その頃OLをしていた叔母が仕事帰りに買ってきてくれる、渋谷フランセのケーキ。まだ洋菓子店も少なかった頃のこと、不二家のものとはまったく違う味わいのフランセのケーキはとても贅沢なおやつ。東郷青児の絵が描かれた包装紙も、その薄紫の淡い色合いといい、デザインといい、子供心にも当時見回す限り最高に美しい包装紙として、大のお気に入りでした。
フランセの普通のケーキももちろん好きだったのですが、それよりも何よりも大好きだったのが、たまにしか売られていないというケーキの切れ端。「今日はあったわよ」と叔母が包みを机の上に。きちんと包装紙に包まれてはおりますが形状でわかるのです。わぁい。様々な形状にカットされたスポンジの切れ端にはところどころクリームが。これがもうもう、この上なく美味でして。
突然、この昔々のフランセの味が甦りましたのは、今日のおやつにあるものを食べたから。それは、溶けた『雪見だいふく』と、カステラ。音楽協会の方がお土産に、『プチ三色 雪見だいふく』、を買ってきて下さったのですが、事務所の冷蔵庫には冷凍庫がございませんで。『雪見だいふく』が溶けるとどうなるか。小袋に入ったままの状態では、変形することもなく見た目は変わりませんが、手にいたしますと、ぐにゅぐにゅ、口に入れますと、とろとろ。で、自分でおやつとして用意してありましたカステラと一緒にいただきましたところ、その組み合わせから…古い記憶が一気に。