William Kapell



ここ数日ずっと、ウィリアム・カペルというピアニストの演奏を聴き続けております。
1922年ニューヨーク生まれ。神懸かり的とも言える完璧なテクニック、若々しい力強さ、甘くロマンティックな音色、そして美しくも愁いを帯びたその容貌。19歳のデビューとともに、多くの熱狂的な女性ファンに囲まれ、アイドルのような人気を誇ったというカペル。聴衆だけではなく、批評家からも高く評価され、順風満帆、輝かしい演奏活動を続けていた彼は、デビューから12年後の1953年、演奏旅行の帰路に飛行機事故に遭遇。31歳という若さで帰らぬ人となってしまいます。この悲報を受けて、カペルも敬愛していたという同時代の天才ピアニスト、ヴラジーミル・ホロヴィッツは「これで私がナンバーワンだ」と、最高の賛辞ともいえる弔辞を述べたとのこと。
意表をつかれ、感覚が揺さぶられるように感じるホロヴィッツの演奏と比べますと、カペルの演奏はまさに正統派、でありながらこの魅力。古い録音にもかかわらず、これだけ惹きつけられるのですもの、実際の演奏はどれほど素晴らしかったか。嗚呼、今、時空を越えることができるなら是非、彼のコンサートが開催されているホールへ。