時間帯を選んで乗りなさい



表参道から渋谷方面へ向かう半蔵門線に乗り込んだところ、夕刻のラッシュ時ということもあり、後ろから押され、玉突き状態で車内中央に立っていた女の子の背中を押すような形に。
聞こえてまいりましたのが、舌打ちと、「押すんじゃねーよ」という呟き。(はい?)長い髪、おへそを出した、いかにも渋谷、という感じの20歳代と思しき女の子。(感じ悪ぅ。好きであなたにくっついているんじゃありませんよー)、と思いつつ、ふと見ると、その子と奥の扉との間には空間が残ってあるではありませんか、もったいない。その子は、てこでも今の位置から動きたくないという様子でしたので、では私がそこに入り込んでしまいましょうと、身を捩ってその子の横を通り抜けると、今度は「…っにすんだよ。いてーんだよ」、と。(混雑時なのだから、体が触れるのはあたりまえでしょう。)。しかも、手で私を掃おうとした時に、その子のブレスレットが私の服の背中部分に絡まってしまったようで、舌打ちをしながらそれを外しております。
さて、ここまでくると、許しがたし。ブレスレットが外れたのを確認し、ゆっくり振り返り、正面からその子の目を見つめます。あらぁ、斜めに視線を逸らして。こちらを見ないの?(もしも目が合い、一言、何見てんだよー、とでも言えば、口でも、手でも負けなくてよ!、ほら、目を合わせなさいよ…)、などと心の中で考えつつ睨みつけている、自分の強気さがなんだか可笑しくて。想像逞しゅうして、車内で取っ組み合いの喧嘩をしている姿など思い浮かべましたらもう、腹立たしいのに、だんだん口元が綻んでしまって。目が怒っているのに、口が笑っている。その子が降りた渋谷駅までの一駅間、ちょっと怖いおば様に。