鰻屋で一人酒



仕事先から母に「今日は夕食までに帰ります。何か食べるものある?」と電話をすると、「しゃぶしゃぶだからなるべく早く帰ってきて。一緒に食べちゃいたいから」、と。急ぎ用を済ませ、実家の最寄り駅から、「今、駅。もうすぐ着きます」と再度電話をかけると、「お父さんがね、どうしても鰻を食べたいって言うのよ。鰻、鰻って。これから、駅前のいつもの鰻屋さんに向かうから、先に行ってて」、と。しゃぶしゃぶモードだった気持ちをぐぐっと切り替え、鰻屋さんへ。
7時少し前だったのですが、他にお客さんは一人もおりませんで。でも、テーブルひとつを除いて全て『予約席』の札が。
その唯一空いていた席に座り、「後から二人来ますが、とりあえず、肝焼き2本とビールを」と注文。突き出しは酢だこ。この柔らかい酢だこと、香ばしく焼かれた鰻の肝に山椒をたっぷりかけて、生ビールと共に。なんて美味しいのかしら。
とそこへ、予約をしていた宴会のお客さんがどどっと到着。あっという間に、店内は満席に。盛り上がる宴会に挟まれ、隣席のおばあ様の不思議そうな視線を受けつつ、一人鰻の肝をつまみにビール。両親が到着したときには、内心ほっと。