藤井一興ピアノリサイタル



今年最初のコンサートは、東京文化会館で、藤井一興(かずおき)さんのピアノリサイタル。ずいぶん前になりますが、娘がレッスンをしていただいたことがございまして、その時からの大ファン。お仕事も数回お手伝いをさせていただき、演奏はもちろん、お人柄もたいへん魅力的。
さて、本日のリサイタルは“オールおフランスプログラム”。前半がフォーレの『8つの舟歌』とルーセルの『ソナティナ』。後半はメシアンの『にわむしくい』。
演奏を聴いておりましと、じわじわと幸せが体に満ちてまいりまして、この幸せ感はいったいどこから、とずっと考えながら聴いておりました。まず、色彩感。娘にレッスンをして下さった時も“色”のお話を、「そこはブルー、ピンク、紫、はい、そしてまたブルー…」というようにされていたのですが、まさにそれが伝わってくる、色が、オーロラのように目に浮かぶ演奏。そして透明感。その色とりどりの光が体を透過するような感覚があり、これが大変な快感。とても不思議な感覚。更に、具現、再現、なんと表現すればよいのか、まるでその物が目の前にあるかのように感じることがしばしば。『にわむしくい』では、森の静寂に響きわたる鳥の囀りが、飛び交う姿が。アンコールで演奏されたラヴェルの『水の戯れ』では湧き、溢れ、煌き流れる水が。ドビュッシーの『Clair de lune』 (『月の光』ではなく、弾き始める前に藤井さんはこのように…)では、まるでこの身に月光が降り注いているかのよう。
よいものを聴かせていただきました。今日の演奏の素晴らしさを感じることができたことを、感謝したいです。