庖丁



昨日、調理をしながら母が「そろそろ庖丁を買い換えないと」と。今年の母の日には、母に庖丁をプレゼントすることにいたしましょう。切れ味がよく、錆びないものが希望のよう。今ちょっと検索してみたのですが、実際に切ってみるわけにもまいりませんし、なかなか選ぶのが難しくて。もう少しお勉強。
そういえば、先日立花隆さんの「エコロジー的思考のすすめー思考の技術」という本を読んでおりましたら、中国の庖丁さんのお話が。

戦国時代の魏の恵王が、庖丁に命じて牛を解剖させた。見ていると、庖丁の刀さばきは実に見事なもので、さながら舞を舞っているかのごとく見え、一挙一動がリズムに乗って、みるみるうちに牛がバラバラにされていく。
恵王が、さすがとほめると、庖丁はこう説明した。
平凡な料理人は一ヶ月ごとに刀を換える。骨を切るからである。上手な料理人でも一年ごとに刀を換える。筋を切るからである。ところが庖丁はすでに十九年も同じ刀を使って、数千頭の牛を解剖しているが、刀の刃は砥石にかけたばかりのようで刃こぼれひとつない。なぜかといえば、自然の筋にそって大きな隙間に刀を入れ、大きな穴に刀を導いていく。牛の生来の組織にしたがって刀を進めていくので、骨に刃を当てることはもちろん、筋を切ることもない。
これが庖丁さばきの極意である。自然に従って、自然の組織を利用して料理すること。これこそ、生態学的思考のもっとも大事な面である。

庖丁さんのような庖丁さばきは無理といたしましても、母には長く愛用してもらえるような、良い庖丁を選んでプレゼントしたいと思います。

エコロジー的思考のすすめ―思考の技術 (中公文庫)

エコロジー的思考のすすめ―思考の技術 (中公文庫)