倶楽部:今宵、銀河を杯にして venenciador



ベネンシアドールという言葉を聞いたのは初めて。そしてその所作を見たのも初めて。
シェリー酒というのは樽の表面にフロールという白い膜が出来ているため、表面を乱さぬよう、ベネンシアという鯨のヒゲの先に銀の小さなカップのついた柄杓のような道具を使いまず樽から汲み上げる。そして、なるべく空気に触れさせて香りをたたせるべく、グラスに注ぎ込みながらこのベネンシアを徐々に頭上高く掲げ、注ぎきったらぱっと滴をきる。このべネンシアを扱う人、所作のことをべネンシアドールと呼ぶのだとか。資格試験があり、日本での有資格者はまだ12人ほどとのこと。先日バーでシェリーを注文いたしましたら、資格を取るべくまだお勉強中というバーテンダーさんが、この技を披露してくださいました。
まず、一杯目。一滴もこぼす事なく見事にグラスに収めたバーテンダーさん。鮮やかなベネンシア捌きに思わず店内、他のお客様からも拍手が。それで心が乱れ集中力を欠いたのか、二杯目はちょっぴり失敗。グラスを拭き、こぼしてしまった分を注ぎ足しながら「こんな事ではまだまだだめです」と目を伏せ、肩を落としていらっしゃいました。まずはワイングラスから始め、最後は口の小さな瓶に注ぎ込み、練習を重ねて試験に臨むのだそうです。この実技だけではなく、筆記、論文の試験も難しいとのこと。頑張ってくださいね。またいつの日か、磨きのかかったベネンシアドールの技を見せていただくのを楽しみにしておりますので。
ベネンシアとはこのようなお道具です。