蒸湯



浴槽に浸かりながら横の壁を見ますと“水を持って入り顔を水で冷やしながら入ってください”、“小窓の近くに顔を持っていき外の空気を吸ってください”、などと注意書きがたくさん書かれた蒸湯が。皆興味はあるようなのですが誰も入ろうとはいたしません。注意書きをしっかりと読み、小さな扉をがらがらと開け、入浴中のおばさま方の「うわぁ、入ってみるみたいよ」「勇気があるわね、うふふ」とひそひそ話す声を背に中を覗き込みますと、サウナのようなものなのですが、狭く薄暗く、まるで牢獄のよう。水の入った桶を手に、中に入り扉を閉めますとまさに囚われ人の気分。タイル張りの台に横たわり、水で顔を冷やし、小窓に顔を寄せましても5分ほどで息苦しくなり、“無理をしないで下さい”、とも書かれておりましたのでがらがらと外へ。10名ほどおりましたおばさま方「あら、生きて出てきたわ」とでも言いたげな好奇(とやや羨望?)の眼差しを一身に集めたのでした。