記念コンサート



昨夜は、『天皇・皇后両陛下 ご成婚50周年ご即位20周年 記念コンサート』というやや長いタイトルのコンサートを聴きにNHKホールへ。一番の目的は、先だってのロビーコンサートで、「演奏後に話をしなくてはいけないから今日は調子が悪かった。ロビーで演奏するのは好きじゃない」、とおっしゃっていたヴァイオリニストさんが、会場はホール、トークはなし、の条件下でどのような演奏をされるのかを聴いてみたい、ということ。
天皇、皇后両陛下のお出ましがあるかどうかはわからない、とのお話でしたが、招待を確定するまでの手順の多さと、当日荷物検査がある、とのことでしたので、まずあるであろうと。
会場へ到着いたしますと、入り口はまるで空港の出国検査のよう。トレイに携帯やらカメラやらを入れようといたしましたところ、「バッグの中のものは別に検査しますから大丈夫ですよ」、とのこと。金属の付いたワンピースを着ておりましたが、探知機が鳴ることもなく、バッグも開いて中をさっと見ただけ。空港よりも甘めの検査。
受付を済ませますと、チケットと一緒にリボンで作られた花を渡され、必ず付けていてください、とのこと。招待客であることが一目でわかるようにしておく必要がございますのでしょう。係の案内で席を確認いたしますと、おお、おそらくあの辺りがロイヤルボックスとして使用されるお席であろうという席の、一列後ろ、20席ほど左手。とても近いです。着物姿や豪華なスーツ姿の女性も多く、もう少しおめかしをしてくれば良かったかしら、と。
興味津津できょろきょろしておりますと、警護か宮内省関係者と思しき方々が繰り返しぞろぞろとお席のチェック。白手袋をして、椅子を撫でてのチェックも。ほう。
そうこうするうちに開演。どうやら、お出ましは休憩後、後半のみのようです。オーケストラ、ハープ、フルートの演奏を楽しみ、続いて件のヴァイオリニストさん登場。確かに、今日は調子が良いようです。弾きこんでいる曲ということもあってか、前回お聴きした時よりもぐっと集中をし、熱い演奏を。なるほど。続いて、テノール、オーケストラのプログラムを聴き、休憩。
ほぼ満席の会場。女性用トイレは大行列。ようやく用を済ませましたのは、後半開始直前。廊下にはすでに人影がなく、「お急ぎください」の案内が。早足で入り口扉に向かいますと、一つ隣のドアからのお出ましのようで、スーツ姿の方々が大集結、すでにロープで囲いが。あらあら。胸のリボンのおかげか、さっと入れていただけ席へ。
会場内は異様な熱気。ホール内の全員が、お席の辺りを見つめております。そして扉が開かれ、両陛下がお出まし。全員立ちあがり、拍手でお出迎え。にこやかに、静かに、挨拶をし、手を振りながら、ゆっくりとお席へ進まれます。なんと穏やかでお美しい。思い浮かびました言葉は、静謐。至近距離でこちらを向いて手を振っていらっしゃるので、こういう場合は手を振り返すべきなのかしら、ちょっと振り返してみたいかも、でもそれも失礼であろう、と逡巡。結局、ずっと拍手を。
両陛下のお席は二階席の中央最前列。一階席の方々も三階席の方々も、全員こちらを見て拍手をし、手を振っておりますので、すぐ近くの席におります私までなんですか、マリー・アントワネットのお取り巻きの気分。
本当に、驚くほど長い時間をかけ、会場の隅々にまでお心配りをされて、左へ、右へ、後ろを振りかえり、三階席は見上げ、一階席はなるべく多くの人から見えるよう身を乗り出され、手を振り、挨拶を繰り返される両陛下。
そして、後半開始。ピアノ、ソプラノ、児童合唱、オーケストラによる演奏。会場は興奮も手伝ってか、普段のコンサート会場とはちょっと違う雰囲気。反応が大きいのです。演奏にどよめき、トークに笑う。まるで、みのもんたさんの番組のお客様のよう。
全てのプログラムが終了し、お見送り。また同じように、ゆっくりと時間をかけ、手を振りながら、ご退席。年配の男性からは、「天皇陛下、万歳!」の声も。無事、扉が閉じられ、ここで、すっかり忘れ去られておりました舞台上の出演者さん達にも、大きな拍手が送られ、終演。
ロビーに出ますと、また拍手が聞こえますので、見上げますとちょうどエレベーターに乗り込む両陛下のお姿が。ここでもまたゆっくりと皆に手を振るお姿が。少し距離もございましたので、思いきって手を振り返してみることに。
これまで、他の皇族方がご来場のコンサートというのは経験がございましたが、天皇、皇后両陛下ご臨席は始めて。興味深い経験でございました。