バリ島 二日目





早朝、鶏の鳴き声で目覚め、テラスへ。バンガローからの景観は、美しい緑の渓谷。谷間には川が流れておりまして、「わあ、なんて気持ちがいいのかしら」、とにっこり深呼吸をしながらふと見ると、あらっ、裸で水浴びをする人影が。遠いのでよく見えず、もしや女性?と、慌てて室内に戻り、メガネをかけて窓から確認いたしますと、現地の若い男性が全裸で水浴び、おお。お風呂もない家庭も多いという土地だそうですので、どうやら水浴びスポットとなっているよう。毎朝、複数の男性の裸体を思わずちらっと見てしまう、というありがたい目の保養をさせていただくことに。
朝食まで時間がございましたので、Iさん宅のお庭を散策。ぐっすり眠っていたので気づきませんでしたが、前夜激しいスコールが降ったとのこと。濡れた緑がなんとも綺麗。良く手入れのされた庭には、東屋があり、池があり、水槽があり、たくさんの花が咲き乱れ、敷地内には個人所有の寺院も。







パンケーキとフルーツサラダ、コーヒーの朝食を済ませ、ルピーへの両替をしつつウブドの街を散策。Hさんの友人だという銀製品屋さんで、ガムランボールなどを購入したり、楽器店で素朴な音色の楽器を買い求めたり。それにいたしましても、バリの人たちは空間を美しくデザインすることにかけては天才的なのではないでしょうか。寺院や個人の家の門構えや、植栽の美しさに立ち止まって見入ることしばしば。
ランチは広大な睡蓮の池に面した、カフェ・ロータスで。奥にございます、川床のようなお座敷席で、頬に心地よいバリの風を受けながらいただくお料理は、お味もなかなか。
ランチの後は、インターネットで評判を調べ、是非訪れてみたいと思っておりましたエステティックJへ。お声掛けをして集まった有志2名とともに、初エステティック体験。ロスメンのご主人Iさんがお店に予約を入れてくださり、車で送迎もしてくださり、と至れり尽くせり。ありがたいことです。
本当でしたら4時間のフルコースを体験したかったのですが、皆から、最初から4時間もでは疲れてしまうのでは、とのアドバイスもあり、バリニーズ・マッサージとフラワー・フェイシャル、の2時間コースを申し込み。受付を済ませ、ロッカーへ貴重品を預け、静かにバリの音楽が流れる少し薄暗い個室へ案内され、「フクヲヌイデクダサイ。パンツダケオーケーデス」、とのことで、ぱぱっと脱いで、顔の部分に穴の開いた小さなベッドの上にうつ伏せに。ふわっと布を掛けられ、まずはバリの伝統的なマッサージ。ローション、オイルなどを塗りながら、全身をマッサージ。うわあ、なんて気持ちがいいのでしょう。ここ一月ほどずっと体に張り付いていた悲しみが剥がれ落ちていくようです。1時間、すっかり体の緊張と疲れがほぐされたところで、シャワーを浴び、次いでフェイシャル。ローション、乳液、スクラブ、パック、乳液、と考えうる限りのありとあらゆるものを顔と首筋に塗り、マッサージをし、ふき取り、を繰り返します。嗚呼、こちらも顔に張り付いて取れないように感じていた悲しみが、洗い流されていくかのよう。本当に来て良かった、と実感。これで日本円にいたしまして1400円ほどですので、なにやら申し訳ないよう。2時間コースを終え、顔も体もつるつるぴかぴか、花の香りにつつまれ、うっとりとしつつ、一度宿へ戻ります。





ロスメンではまたIさん手作りの美味しい夕食、バリの伝統的な家庭料理をたっぷりいただき、バリコピ(コーヒー)でくつろいだのち、バリの有名なダンス、ケチャ鑑賞のためプリアタン王宮へ。これもまたIさんの素晴らしい手配で、最前列の一番良い席を確保。バリ島でも、観光客向けの本物とは言いがたいケチャも多いという中で、こちらのスマラマドヤのケチャはレベル、人数、メンバー共に最高峰と言われているとか。
揺れるランプの灯りの中、目の前で繰り広げられる、100名以上の男性達による、激しくも複雑な合唱と一糸乱れぬ動き、ラーマ王子やシータ妃の踊りは、なんとも見事。そして幻想的。このケチャ、古い歴史を持つものかと思いましたら、意外にも1930年代、村同士の諍いを収める目的で、ドイツ人の提案により始まったものとのこと。

ケチャの会場で一緒になりましたお嬢様二人組みは、前夜別のケチャを見てきたそうですが、迫力がなく今一つだったのでこちらの会場へ足を運んだとのこと。やはり、スマラマドヤのケチャの方がずっと良かった、とのお話でした。このお嬢様方から、メンバーの一人が、「皆さんは、どなかたの結婚式でバリへいらっしゃったのですか?」、と訊かれたとか。Hさん繋がりということもあってか、学生もおば様もおじ様も、皆で楽しくおしゃべりをして、たくさん笑って、和気藹々。普通のツアー客というよりも、仲の良い親戚か何かに見えたのでしょう。
盛りだくさんな一日にも拘らず、少しも疲れを感じることがなかったのは、良いメンバーに恵まれたことと、Iさんの素晴らしい手配のお陰、と感謝を。