天使達



まだクリスマス気分が抜けない画像です。木の玩具に興味を持つ最初のきっかけとなりましたのが、この5人の天使達。
もう30年ほども前のことになるでしょうか。音楽高校受験を控え、ピアノの実技以外の、聴音、ソルフェージュ、楽典などをみていただいておりましたのがK先生。目指しておりました学校付属の音楽教室の講師もなさっていた、まだお若く、それは厳しい先生でした。ピアノのレッスンでは泣いた覚えはないのですが、このK先生のレッスンでは何度も泣いた記憶が。でも、怖い先生ではあったのですが、賢く、センスがよく、私の憧れの女性でもありました。
K先生はピアノも教えておりまして、発表会には私も参加をさせていただいておりました。発表会の記念にいつも参加者全員にプレゼントをくださるのですが、ある年のプレゼントがこの天使たち。阪急百貨店の包装紙に包まれておりましたので、おそらく有楽町阪急で買いもとめてくださった品だったのでしょう。天使にも箱にも何も文字が記されておりませんので、どこの国のものなのかもわからないのですが、なんとも愛らしくて。大切な宝物の一つです。
K先生の楽しいエピソードを一つ。まだ受験生としてレッスンを受けていた頃のこと。ある日、レッスン室に入り、ご挨拶をしようとふと先生を見ますと!、目が痛くなるようなお下品な真っ赤っ赤のミニのワンピースに、怪談の化け猫が血を滴らせたかのようなこれもまた真っ赤な口紅。目の上は抜けるような青空を思わせるブルーのアイシャドウがべったり。元々おかっぱロングの髪を無造作におろし、眉は濃く、頬にはまん丸く頬紅が。いつもは清楚で趣味のよい装いの先生ですので、思わず目が丸く。な、何が?先生、いったいどうしてしまわれたのですか?訊ねたいものの、怖い先生ですので訊くことも、また笑うこともできず。先生は何事もないかのように、平然といつも通りの厳しいレッスンを。
それから数年後。当時、大学を卒業したばかりの私が、K先生にお見合いについての話をいたしましたところ、「私もずいっぶんたくさん人とお見合いをしたけれども、お見合いって断るのが面倒でしょ。なかなか断りにくいのよね、間に入って下さる方とかもいるし。私も、どうしても嫌な相手がいて。なんて言うか、お育ちが悪いっていうのかしら。とってもお金持ちだし、家柄もいいのよ。でもそれと育ちの良い悪いというのはまた別なのよね。で、先方から断っていただくように、もの凄い格好をして、もの凄い化粧をしてびっくりさせて断っていただいたことがあったわ。」、と。おお、まさにその日、私はレッスンを受けたのですね。作戦は成功し、すぐにお相手から仲人さんへ、丁重なお断りの電話が入ったとか。