つゆだくおでん



終業時間間際、社長が「ビールでも飲むか。あなたも飲みなさい。コンビニで買ってきてくれるかな、瓶ビール。あと、おでんも。僕ははんぺんと大根ね」、と。
いつもまいりますコンビニには、おでん用の容器に大、小、がございまして、小はおでん種4つほどでいっぱいになってしまうサイズ。大は一気に大きくなりまして、小さなバケツほどもあります。一人ずつ分けていただきたいので、小の容器を選択、三個ずつおでん種を選び、詰めてもらっておりましたところ、後ろにいた中国人の若い女性が、「わたしも、おでんください」と。別の店員さんが、「はい。大きな容器と小さな容器がありますが、どちらに?」と訊ねましたところ、「おおきなほうで」、と。(あ、いっぱい買うのね)と思っておりましたら、彼女が慎重に選びました種は、大根とウィンナー巻きの二つのみ。「それだけでいいです」、と他の商品を選びにレジを離れてしまいました。大きな容器を手に呆然としております店員さんと、思わず顔を見合わせて笑ってしまいまして。バケツのような容器の底に、寂しげに並ぶ二つのおでん種。私が、「汁がいっぱい必要なんじゃないですか。」と言うと、「わはは。きっとそうですね。じゃあ、もうたっぷりサービスしちゃいましょう。」と大きな容器になみなみとだし汁を注ぎ入れまして。2つのおでん種は汁にぷかぷか。
さて、部屋に戻り、容器を開けた彼女。果たしてたっぷりの汁に満足したでしょうか。それともアンバランスな汁の量に我が目を疑ったでしょうか。彼女は、「しるをいっぱいいれてください」とは言っていなかったのですから。私の一言は、余計な一言だったかもしれません。きゃあ。