München



ミュンヘンで宿泊いたしましたのがケンピンスキーという素晴らしいホテル。バイエルン州立歌劇場のほど近く、高級ブティックが軒を連ねるマクシミリアン通りに面して建ち、バイエルン王マクシミリアン2世の迎賓館として1858年に建てられたというこのホテルは、国賓級のゲストが利用することで知られているとか。
ホテル内で、イタリア人の青年に「スィニョリータ」と呼ばれ気を良くした、ということもあり(単純です)、その出来事も含め、たいへん好印象のホテル。
 
もう、この辺りになりますと旅の疲れも出ておりましたのか、ホテル滞在二日目の朝、画像左の美しいロビーにミンクのショールを忘れたままザルツブルク観光に出かけてしまったのです。半ば諦め、観光を終えてホテルに戻り、フロントに問い合わせますと、「ハウスキーピングにそのような品が届いております」とのこと。このような状況になりますと必ず思い出すお話、「金の斧、銀の斧」のように、置き忘れた物よりもずっと豪華なセーブルのストールでも出てきたらどうしましょう、などとFさんに話しつつ待っておりますと、恭しくハウスキーピングの女性の腕にかけられて届けられましたのは、まさしく私のショール。まぁ、嬉しい、Vielen vielen Dank! 。Bitte schon.と静かに答える女性の笑顔がまた素晴らしいこと。そう、こちらのケンピンスキー。スタッフが皆美形、器量よし、そして笑顔よし。
もう一つ、素晴らしいと思いましたのが、ベッドの寝心地。特に大きなふわふわの羽毛枕の気持ちよいことといったら。このケンピンスキーにはユニークなサービスがございまして、もしもこの枕が気に入らなければ、有料ではありますが、10種類もの枕から好きなものを選んでオーダーすることができるのです。ターンダウンされた枕の上にはこのように、翌日のお天気予報カードと共に、枕のメニューが置かれておりまして。
 
あまりに、この枕が気に入りましたので、帰国後、メニューに書かれておりましたMühldorferという会社のサイトを検索いたしましたところ、こちら、世界の名だたる高級ホテル、例えばドバイのバージュアルアラブにも寝具を納めているメーカーとのこと。で、個人で購入できる品も発見。それがこちらのセット。うわぁ、欲しいです。枕が80×80と、まるでお座布団のような真四角なのがちょっと気になりますが、(ケンピンスキーのものは、60×80ぐらいだったような)、今使っております羽毛布団ももう長く使っておりますし、そろそろ買い換えたいと思っていたところ。欲しい欲しい。可能ならお取り寄せしたいです。でも…ドイツから送ってもらうとなると、きっと送料がお高いのでしょうね。ぐすぐす。でも、本当に、普段枕嫌いの私が惚れ込む、素晴らしい寝心地の枕だったのです。
右は、荷を解くべく開いたスーツケース。今回の旅は、観光で多くの場所を訪れたものの、ホテルは全て連泊でしたので、連日荷造りに追われるということはなくとても楽でした。また、知人のアドバイスを受け、行きの、まだいっぱい残る空間にぷちぷちを詰めていってみたのですが、これがとても便利。お土産に買い求めました壊れ物の梱包には大活躍いたしますし、必要がなくなれば処分してくればいいですし。お薦めです。
 
今回の旅の大きなお楽しみの一つでした、歌劇『魔笛』。オペラ座まではホテルから歩いてすぐ。少しおめかしをし、夕食を済ませまして歌劇場へ。まず、クロークにコートを預け、絢爛豪華な建築にうっとり見とれつつパンフレットを購入し、場内に入り、席を確認いたしましてびっくり。よい席が取れたとは伺っておりましたが、10列目、中央。知識の宝庫、ミュンヘン在住のgさんも、「ここは普段は演出家用の席ですよ」、と驚かれるほどの素晴らしいお席。モーツァルトイヤーの今年、しかも今、夜の女王を歌わせたら世界一というディアナ・ダムラウに、指揮はモーツァルト振りとしては、やはり今最高だと言われておりますアイヴォ−・ボルトン。よくぞこのような席を押さえられたもの。Gさんに感謝を。
それは素晴らしい舞台でした。何と申しましても、ダムラウの夜の女王。「どんなもんだい!」という風格と歌いっぷり。美しくも華奢な容姿ですのに、いったいどこからあの透き通った力強い声が発せられるのか。どのアリアもあまりに見事で、思わず(凄過ぎ…と)笑ってしまうほど。パパゲーノも3人の童子も見事。指揮も見事。ヨーロッパの歌劇場では、素晴らしい演奏には、ブラボー、ブラバ、の掛け声だけではなく、足踏みによる賞賛が。カーテンコールでは、これらの素晴らしかった出演者にはドドドドドド…、と地響きのような足踏みが。もちろん、バイエルンほどのオペラハウスになりますと、どの出演者も皆素晴らしい歌を聴かせてくれるのですが、普通に上手なぐらいでは拍手しかいただけません。驚くほど素晴らしい歌を聴かせた歌手にのみ、足踏み、が贈られるのです。このあたりははっきりとしておりまして、とてもシビア。
余韻もさめやらぬ終演後、仲良し5人組プラスgさんの6人で、ホテルに戻りワインバーで楽しい語らい。素晴らしい夜でした。