倶楽部:今宵、銀河を杯にして  浅草 松風



公演の仕事の後、社長、スタッフの女性と3人で、浅草にございます居酒屋、『松風』へ。浅草では有名なお店なのだそうですね。あとの二人はたまに飲みに行っているようなのですが、私は始めて。こちらの、『松風』、少々変わったシステムのお店でして、暫く店内の様子を見て心に思い浮かびましたのは、ストイック、閉ざされた空間、という言葉。
まず、午後4時オープンなのですが、午後7時までは「会員優先タイム」とのことで、店内が混み合っていると、一般客は断られることも多いとのこと。どのようにすれば会員になれるのか存じ上げませんが、「店内での喫煙は会員にのみ許される」、などちょっと考えられないようなお約束事が。
お酒は一人3本まで。店員さんはとっても無愛想。注文の仕方なども気をつけませんと、昨日も、遅れて席につき、社長に「もう私達は頼んだからあなたも好きなもの頼みなさい」と言われ、「では、すみませーん!田酒、燗で」と注文いたしますと、店員さんから「先ほどもうお連れ様から、田酒の燗と冷を注文していただいていますのでそちらをまず飲まれてからでよろしいかと」と注意(アドヴァイス)が。
その後も社長が、「すみません、同じものを」と追加のお酒を注文した時に、店員さんが「冷と燗で?」確認しましたのに、(その前にワインをかなり飲んでおりましたので酔ってしまっていた社長が)、冷にするだの常温だの燗だのとぐずぐず言っておりまして、結局「冷と燗で」と言うと、「では、最初に言ったのでよかったんじゃないですか」と。ええ、ちょっとそれはお客様に対して失礼な物言いじゃございません?酔っ払いにはもう少し優しく、「はい、かしこまりました」でよろしいのでは。と思ったのですが、このお店はどうやらそういうお店ではないのですね。
静かに訪れ、静かに美味しいお酒を飲む。そして綺麗に酔う、お店。確かに、店内も、器も、一本につき一つ出されるお通しも、どれもとっても洒落ています。お酒も素晴らしく美味。店主の美学に、客が合わせる。それはそれでよろしゅうございますが、まあ、お酒なんですし、ある程度好きに飲ませてくださいませ。それと、店主はきりっとして感じがよかったですが、店員さんの接客態度はもう少し改めたほうがよろしいかと。注文を受けましたら、せめて「はい」ぐらいは言いましょうね。
閉ざされた世界の人達にとっては、それが日常になってしまっているのでしょうが、外の世界から訪れた人間の目からは、理不尽で滑稽なところがあれこれ目に付く。酔った頭で、そんな事を考えながら、帰途に。