一音入魂/先手必勝



私が子供の頃は、ピアノの先生方もまだ、気合い、根性が大切、といったまるでスポーツのような指導をする先生も多ございました。ちょっとでも音を外すと尖ったエンピツで手の甲を刺された、ペダルをミスしたら足にメトロノームを投げつけられた、といった恐ろしい話も数々。私も「ミスをしたところは必ず100回ずつ繰り返して練習しなさい」、ですとか、「一日15時間レッスンしてごらんなさい」などと指導されたことが。
幸い、娘がお世話になっております先生は、稀に見る指導上手でして、問題点はどこにあるかを明確に提示、解決する為の方法をその時々に応じて的確に指示、するので生徒達が皆見違えるようによい演奏をするようになります。それは、ミスをしない、といったことではなく、考えられた演奏、よい音楽であるか、といった意味で、なのですが。
すっかり時代が変わり、今の子供達は幸せ、とばかり思っておりましたら、未だに、ばりばりミスなく弾くのが一番!という先生もいるとのこと。先日、娘の友人がレッスンを受けた先生は、なにしろミスのない演奏をよしとしているとのことで、レッスン中に「一音入魂!」とまでおっしゃったそうな。
お子様をピアノ教室に通わせていらっしゃるお母様方。先生選びは大切でしてよ。ミスなく弾くことばかりを学んでいたのでは、いつまでたっても自分の音楽を作り出せるようにはなりません。先生の演奏を聴かれる、もしくは、その先生の生徒の発表会を聴かれて、「この演奏が好きだわ」と思える先生を選ばれるのがよろしいのではないでしょうか。
話は変わりますが、ミッドタウンプロジェクトの工事現場に「先手必勝」の文字が大きく掲げられているのですが、あれは何故。工事現場で先手必勝。「この現場は俺がもらったぜ」、「おっと残念だな。そこはもう作業に着手させてもらっている…ふふふ」「くっ、先手を打たれたか…」といった意味ではなかろうと、思うのですが。