草津 高砂館



翌日は湯畑から一本裏手、地蔵の湯にございます高砂館へ。湯畑へ向かう一方通行の道から、車二台がすれ違えないような細い路地を下り、「こ、ここ?」と、まるで間違って建物に頭を突っ込んでしまったかのように狭い駐車場へ。
不思議な旅館でして、お部屋数はおそらく20室以上あるのですが、連休中だというのにこの日使われておりましたのは4部屋ほど。お風呂場で、常連、という方から情報収集しましたところ、ご夫婦二人でできる範囲内で営業しているので、一番多くても10名ぐらいまでしか予約を受けないようだ、とのこと。
洗面所は共同ですし、木の廊下は斜めになっていたり、思わぬところが盛り上がっていたり段差があったり、で両手を広げてバランスをとらないとよろけてしまいそうに。お部屋も、美しい細工の障子や、一枚板の欄間から立派な旅館であった昔の名残は感じられるものの、全体的にくたびれてしまっていて、お世辞にも素敵とは言いがたいもの。
それでも、小さいながらもよい泉質の温泉と、とてもじゃございませんが食べきれませんでしてよ、という量のお食事、そして素朴で暖かい人柄が滲むご主人と女将のおもてなしが、たいへん心地よい旅館。
あれだけの素晴らしい立地条件にありながら、使われていないお部屋達がもったいないようで、もしも私が女将だったら、まず浴場の造花と作り物の観葉植物は全て処分して、駐車場を確保して、予約の受け方を変えて、食事は…等と勝手にあれこれ。でも今、旅の写真を整理しながら思いましたのは、あのままあそこにあるのが、高砂館のあるべき姿、ずっと変わらずにいてほしい、と。



むかごご飯