手懐ける



手なずける。言葉としてはあまりよくありませんが、どうやらわたくし、男児を手懐けるのが得意なようでして。
訪れる度、「僕の所に来てないときには、いつも何をしているの?」と尋ねる男の子に続き、先日、シッターで訪れたお宅でのこと。お母様が出かけるときには、「ママがいいー。ママと一緒じゃなきゃイヤだー!えーんえーん。」と泣き叫んだお坊ちゃま。二人きりになり、30分ほど話したり遊んだりいたしましたら「ねえ、今度はいつ来るの?明日くる?また来たいです、って言ってみたらいいんじゃない?」と。ふっふっふ、愛いこと。このお坊ちゃまは超有名ミッション系幼稚園に通っておりまして、私の事を「呼び方はシッターさんでいいわよ」と言ったのですが「シスターさん」と。ほほほ。よろしいでしょう。神に仕える身ではございませんが、今日は「シスター」と呼ばれましょうぞ。
止ん事無き方々のお住まいを眼下に見下ろすマンションの広々としたリビングで、「おやつに」、と用意されたゴディバのチョコレートやら美味なチーズスティックやらを、エスプレッソマシンで入れたコーヒーと共にいただく。折り紙をしたり、絵本を読んだり、時にはお坊ちゃまのヴァイオリンに合わせてピアノを弾く。「できればやらせておいて下さい」と机の上に置かれた、「4歳なのにこんなに難しい問題解いているの?」と驚くような幼児教育の教材。「一枚ぐらいやっておく?」と訊くと、こくんと可愛く頷く坊ちゃま。ペンギンやウサギが裏返ったらどの形になるか…。「こんな事答えられてもねえ…はいっ、ではこのペンギンさんが後ろ向きになったらどれ?これ?うーん、そうかしらぁ。まあ後ろ向いた時に尻尾の向きを変えちゃうってこともあるでしょうけど、やっぱり正解はこれじゃない?」と鉛筆でくるっと正解に○を。この調子で10問ほど、ややややこしい後姿探しをしてお勉強は終了。
途中、心配をして「もしもぐずって泣いていたら急いで帰りますので」と電話をかけてきたお母様に「問題ございませんので、どうぞごゆっくり」と答え電話を切ると坊ちゃまは「ママ帰ってくるの?まだ帰ってこなくていいですって言った?やったー!!」と。なかなか楽しいお仕事なのですよ、ベビーシッター。