ハードボイルド…な東西線



地下鉄東西線。たまにしか乗らないのですが、どういう訳か乗るたびに驚くような出来事が起こります。先日も、座っておりましてふと斜め前を見ると、ドアの横に座り込んでしまっている男性がおりました。年齢は30代ぐらいでしょうか、手にしたタオルで床を拭いております。タオルは真っ赤。赤ワインでも飲み過ぎて、もどしてしまったのかしら、と思いましたら、そうではなくて、それは血。額から血を流し、血の海の中に座り込み、自分で床を拭いているのです。
周りの乗客も気づき、皆でとりあえず手持ちのティッシュなどを手渡し、次の停車駅で降りた乗客が車内に怪我人がいる事を知らせ、駅員さんが飛んでまいりました。「お客さん、どうしたんですか。大丈夫ですか?」と声をかけると「いや、大丈夫ですから。すいません。」と。「大丈夫じゃないでしょう。救急車呼びますから、まずは降りてください」と電車から降ろし、ホームへ。
5分ほど、この駅に停車いたしましたが、「急病人が出たため、電車遅れまして申し訳ございませんでした」の放送とともに電車は発車。そして、ほっといたしましたのも束の間、電車が動き出してすぐに、まただーーーん!という大きな音とともに男性が一人床に倒れてしまいました。みんな「なに?何かあったんじゃないの、この電車」「また急病人だ」とざわざわ。仰向けに床に倒れている若い男性は顔面蒼白。ただ、こちらの男性はしばらくいたしましたら自力でむっくりと起きあがり、次の駅で、他の乗客に支えられて電車を降りてまいりました。どうやら大量の血を見て、貧血を起こしてしまった様子。
情報が錯綜して、次の駅でも「急病人はどこですか!」と駅員さん達がなだれ込んでまいりましたり、また別の駅では血の掃除のために、モップなどを持った駅員さんが乗り込んできたり、ともう大騒ぎ、でございました。
この他にも、先月でしたか、やはり東西線の車内に泥酔した初老の男性がおりまして、大声で歌ったり、奇声を発したり、他の乗客にからんだりしておりました。みんなが困ったわ、という顔をしておりましたら、一人の男性が、その酔っぱらった男性の横に立ち、小声で話しかけたり、相づちを打ったりして、相手を初めてくれたのです。おかげで、酔った男性も大きな声ながら、「すいませんねえ、迷惑で。酔っぱらいですっ!」と少し落ち着いた様子。
さて、その酔った男性が降りる時に、傘を手すりにかけたまま忘れて行きそうになりまして、この相手をしていた男性が腕にかけてあげました。その瞬間「俺の身体に勝手に触るんじゃねー、ばかやろー!」と酔った男性がまた大声を。すると、相手をしてくれていた男性が静かに「こういう時には、馬鹿野郎じゃなくて、有難うだろ」と言って立ち去って行ったのです。嗚呼、格好いい。
どちらの状況でも、なんとなく「ハードボイルドな東西線」という言葉が心の中に思い浮かんだのですが、考えてみましたらハードボイルドという言葉の意味がよくわかっておりませんで。ハードボイルド小説でも読んでみまして、その意味を理解してみる事にいたします。