竹田扇之助記念国際糸操り人形館



滞在中に2時間ほどの自由時間ができましたので、訪れてみたいと思っておりました人形館へ向かう事に。地元の方が「車で先導しましょう」とおっしゃるのを、申し訳ないので「一人で行けますので、結構です」とお断りしたところ「またそういう冷たい言い方をする。田舎の道を侮ってはいけません」、という事でお言葉に甘える事に。甘えて良かったです。一人ではおそらく辿り着けなかったでしょう。小高い山の、奥まったところにございます、人形館。連れて行って下さった方は、興味がないとの事で帰ってしまわれましたので、一人で見学。

訪れる人も少ないようで、係の方がつきっきりで案内をして下さいました。喜之助人形、美しかったです。今見ても、古さをまったく感じません。竹田喜之助さん、東大の機械工学科を卒業された方だそうで、56歳で交通事故で亡くなるまでの間に2600体もの竹田人形座の人形を製作したのだとか。この2600体の人形を所蔵しておりました竹田扇之助さんが飯田市にすべて寄付をして、その保存と展示の為に作られたのがこの人形館だそうです。

舞台も再現されておりまして、真っ暗闇の中、高い位置にございます三本の板の上で演じる難しさ、高いとはいえ普通の舞台よりは高さがないので、雪を雪らしく降らせる為に薄紙を手で小さな三角に切り、竹籠に入れそれを揺すって降らせた工夫、など興味深いお話をたくさん伺う事ができました。ただ、今は人形座としての活動はまったくしていないのだとか。もったいない。いただいたパンフレットのトップには世阿弥の「風姿花傳」から

『…當藝に於いて、家の大事、一代一人の相傳なり。譬え一子たりと言ふとも、不器用の者には傳ふべからず。「家 家にあらず、続くをもて家とす。人 人にあらず、知るをもて人とす。」と言えり。』

の一文が書かれておりました。色々と事情はおありなのでしょうが、美しい、素晴らしい人形達に、動く、演じる機会をまた与えてあげていただきたい、と思いました。