なにゆえ



夏の終わりの、日差しのとても強い午後の事でした。私はJRの車内で座席に座り眠るでもなく目を閉じておりました。

ある駅で、靴の先が踏まれたのを感じ、足を引き抜きました。かなり強く踏みしめられておりましたので、足をすぽっと抜き、踏んでいた人を確認すると50代前半ぐらいのスーツ姿の男性です。それほど混み合った車内でもありませんでしたのに、人の足を踏んでしまった事に気がつかなかったのかしら?と思いながらもまた目を閉じ、暫くいたしましたら、今度は頭になにやらがさがさと当たります。目を開けますと、先ほどの男性が広げて読んでいる新聞紙を前に突き出し、それが私の頭に当たっているのでした。どういう事なのかしら、とその男性の顔を見たのですが、素知らぬ顔。髪が乱れてしまうので迷惑だわ、と思いながらもまた目を閉じますと、今度は何やら肩の辺りに気配を。驚いて目を開けますと、なんと手を伸ばして強い日差しを遮るために下ろしてありましたブラインドを上げたのでした。これにはいい加減周りの乗客もびっくり。私もびっくり。

じりじりと照りつけるような、それはそれは強い日差しだったのですよ。どうしても外の景色が見たいのかしら、とその男性の顔を見上げたのですがそうではないようで、知らんぷりで新聞を読み続けております。これは嫌がらせ?何のために?座りたいのかしら?だとしたら、こういったやり方は絶対に許せないわ。病気のようにも、精神を病んでいるようにも見えないし、、。理由を尋ねてみたかったのですが、殴られたり刺されたりしたら嫌ですし、かといって席を立つのも嫌でしたので、目的地まで「焼け焦げててしまいそう」と思いながらもそのまま座り続けたのでした。

彼の行動の目的は、いったい何だったのでしょう。



カルーアが原液ですのでかなり強いです