必殺技二種



孫一が精神的に不安定なのか、とってもきかない子供になっております。孫二に対しては、にこにこ顔で話しかけたり、しつこいぐらいキスをしたり、撫でたりして可愛がっているのですが、ちょっとしたことで癇癪を起こして、物を落としたり、投げたり、泣き叫んだりすることが頻繁に。たいてい、「そんなつまらない事で泣かないのよ。好きに泣いていなさい」、と放っておくのですが、そうもいかない時の祖母の必殺技が二つ。
一つは、「だーるまさん、だーるまさん、にーらめっこしーましょ」のあっぷっぷの顔をすること。そしてもう一つが、オペラ『リナルド』の中のアリア、「Lascia ch'io pianga/ラッシャ・キオ・ピアンガ/わたしを泣かせてください」、を歌うこと。孫はこの歌が好きなのか、自分でCDプレーヤーを操作して聴いておりましたので、横で真似をしてやや誇張したソプラノ歌手っぽく歌いましたところ、「こわいー!」と泣きべそ。
ということで、あまりに言うことをきかない時には、「あっぷっぷするわよ!」、「ラッシャ・キオ・ピアンガ歌うわよ!」と言うと、ううん、ううん、と激しく首を横に振って真剣に恐がるのです。私の顔を見て恐がる、私の歌声を聴いて恐がる、考えてみましたらどちらも失礼なことではあるのですが。
そういえば、私がまだ小さな時、明石の伯母は渋谷に住んでおりまして良く遊びに行っていたのですが、そこで悪戯をしたり言うことをきかなかったりした時の伯母の一言は、「emimiちゃん、山から天狗が来るわよ!」。伯母の家の納戸にはとても恐い顔をした天狗のお面があり、たいへん恐くてその前の廊下を通るのすら恐かったのですが、その天狗の本物が山から来るなんて恐ろし過ぎ、ぶるぶる、とこの一言が出ますと、瞬時におとなしいよい子になったものでした。