金魚



数年前から母が庭に大きな睡蓮鉢を置き、金魚を飼って…いるのですが、これが近所の野良猫の栄養源となっておりまして。近くのホームセンターで10匹、20匹と買ってまいりましても数日で影も形も無く。怒った母は野良猫退治用に、水鉄砲まで購入。徹底抗戦を試みるもかいなく、いつもあっという間に全滅。
ところが先日、退院をしてふと庭を見ましたところ、睡蓮鉢の中に赤い金魚の姿が。数えてみると、10匹も。母に訊ねましたところ、「凄いのよ、この子達は。この前お父さんとお花見に行った時に、出ていた縁日の金魚すくいのおじさんに頼んで譲ってもらってきたの。これは観賞用の金魚じゃなくて、お遊び用の金魚ですよ、って言われたんだけど、それでも結構ですから、って言って。それが、あの金魚すくいの、常に追われて苛められる辛い環境で生きてきたからか、可哀相なぐらい怯えきっているの。人影がちょこっとでも見えただけで、ぱっとみんなで素早く物陰に隠れちゃうの。それが早いのよ。でも、その警戒心とすばしっこさが幸いして、猫にはまだ一匹も食べられていないの。たいしたものだわ。」と。
確かに、ガラス戸越しに静かに見ているぶんには、その群れなす姿を見ることは出来るのですが、餌をあげようと鉢に近付きでもしようものなら、まるで忍者のように、ものの見事に姿を消し去ります。ホームセンターの水槽でのんびり泳いでいた金魚達とは違い、辛い環境を生き抜いてきた金魚達だけに、猫の攻撃からも身を守ることができそうなしたたかさと俊敏さが感じられます。頑張れ!