HOW TO オペラ



雑誌『音楽の友』6月号の特集は「HOW TO オペラ・歌劇場“聴衆デビュー”基礎講座」。オペラハウス=歌劇場での振る舞い方から、聴き方、作品、歌手、お国柄など30数ページにわたり初心者にもわかりやすく、興味深く書かれた文章が並んでおります。

この特集のトップ、堀内修さんが書かれた「第1の扉 オペラ劇場への招待」など、もう読みながらにやにやしっぱなし。以前にこの日記でもクラシックのコンサートの聴き方について少し触れましたが、まず堀内さんは「歌劇場でのお作法」について、

「じっと黙っていなければならない、という雰囲気がひしひしと伝わる。そのプレッシャーがイヤだ、と言った人がいた。こういう人は歌劇場から離れていた方がいい。黙っていられない人って、どこでも困りものなんですがね。もしかしたら、歌劇場で求められる最小限の作法は、困りものの人を遠ざけるために発明されたのだろうか。」に続き、「○時間を守る」「○拍手」「○ブーイング」などのお作法の解説が続くのですが、中でも楽しく読ませていただきましたのが「○静かにしている:話したり、食べたり、飲んだり、貧乏ゆすりをしたり、してはならない。恋人の手を握るのは‥‥‥うーん。」「○会話:幕合いに、そしてオペラのはねた後に、人はいったいどんな話をするのか?オペラ関係者は、オペラの話を避けるものだけれど、普通は話題にしたってかまわない。だが歌手の悪口や上演への苦情を、声高にしゃべるのは、上品ではない。オペラ好きの中には上品過ぎる人もいるから、自分を下品に見せたい時には効き目がある。「なーに、あのデブのテノール、歌ってるんじゃなくてわめいていましたよ」なんて、よろしいんじゃないかと思う。」

また「いざ歌劇場へ」の中で「何を着て行くか、誰と行くかも、歌劇場では大切だ。ルネサンスの祝祭を受け継いだオペラには、もともと祝祭的装いがふさわしかったのだが、このごろは気楽な服装に流れている。ミラノ・スカラ座のシーズン・オープニング、ザルツブルクバイロイト、それにミュンヘングラインドボーンなどの音楽祭を除けば、盛装する必要はない。普段よりちょっとドレッシー、というくらいで十分だろう。大切なのは気持で、高揚した気分が望ましい。一緒に行く相手も、難しいことはない。ゴージャスな不倫相手こそオペラにふさわしいとは考えられているが、夫婦や恋人のような公然たる組合せでも、非難はされない。《仮面舞踏会》や《トリスタンとイゾルデ》を、恋人や夫(妻)と一緒に聴くのはやっぱり恥ずかしく、できれは秘密の相手が望ましいのだが、やむを得ない。また、一人というのも現代では認められている。」

と。音楽の友、お堅い本だとばかり思っておりましたのに、ほほほ。オペラに興味がおありでしたら、「音楽の友」6月号はお勧めです。